ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「あ。そうなんや。よかったぁ。……リタを幸せにしてあげてね。」


しかし、ドラコは苦しそうに顔を歪めた。

「……私は……家庭には不向きな男だ……。戦うことが、本分なのだ。そんな男との結婚なんぞ、気苦労ばかりだ。……とても幸せとは言えまい。」


そういえば、前にもそんなこと言ってたっけ。

まあ、命を賭けて戦場に行く……というか、周辺国を侵略してきたんだもんね。

結婚というか、妻子を足枷に感じるのかもしれない。


でも、さ。


「うーん、どうかな。そのへんはさ、リタとティガに聞いてみたら?……2人はドラコのことをよくよくわかってるし、大丈夫だと思うよ?……少なくとも、私がリタなら……ドラコが喜んでくれたら、それだけで、生涯幸せだと思う。」


どうしても、脳裏にイザヤを浮かべてしまった。


私たちは、妙にしんみりとしたまま、山海の珍味盛り盛りの豪華な夕食をいただいた。


温泉はなかったけれど、花を浮かべたロマンティックなお風呂でゆっくり足をのばした。

そこかしこの傷からまだ血がにじんでいる。


……薬を塗ってくれるイザヤはいない。

手の届く範囲だけ、自分で塗って、早めに眠った。



夜中に高熱を出した。

やはりまだ旅は無理だったのだろうか。



解熱剤が欲しくて、廊下に出た。

杖がカツンカツンと音をたてた。


すぐに、ドラコが隣の部屋から飛び出してきた。

「どうした!?」

「……ごめん。起こして。……なんか、しんどくて……。」


ふらついた私を抱き留めて、ドラコは言った。

「いかん。すごい熱だ。」


ドラコは、私を抱き上げると、再びベッドに下ろした。


「すぐに、医者を呼んでもらうからな。」

「……お薬だけでいいよ?」


一応そう言ってみたけど、ドラコは医師を手配したのみならず、ティガとイザヤにも高熱で延泊すると書状を送ったらしい。


駆け付けた医師から化膿止めの塗り薬と、熱冷ましのお薬をもらった私は、そのまま懇々と眠りに落ちた。


***


イザヤの声が聞こえる……。

……ような気がして、私はぱっちり目を開けた。



「目覚めましたか。よかった。……気分は、悪くないですか?」


私の顔を心配そうに覗き込んでいたのは、ティガの銀色の瞳。


「ティガ……。ん……。しんどくない……と、思う。……ここ……まだ宿よね……わざわざ、来てくれたの?……ごめんなさい。」