ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「地の利だけでも、ありがたいさ。」

ニコルスがなだめた。



「……期待はずれ……地の利……。」

イザヤは呆然と繰り返した。


……プライドずたずた?



私は、慌ててイザヤをなぐさめた。

「よかったやん!イザヤは領地も俸禄も保障されて、私と元の館で暮らしていいってお墨付きもろてんから。オースタ島も貰えるんでしょ?また神殿建てよう。温泉も入ろう。」



でもイザヤは、押し黙ってしまった。


……そういうわけにはいかない……のかな……。




「無論、協力してくださるのでしたら、ありがたいことです。……ですが、強制はいたしません。意味がありませんから。」

ミシルトは、イザヤだけじゃなく、私にも視線を移してそう言った。



「……いや、するよ。協力。できる限り。新しい館を軍事拠点にしちゃえばいいやん。したら、手伝えることも増えるでしょ?炊き出しなり、何なり。」


さっき協力すると言った手前、対岸の火事にはしておけない。



「いや。安請け合いはしないほうがいいな。遊びじゃないんだ。……素知らぬ顔で、インペラータの情報を流してくれるだけでも、助かるぜ。」


ニコルスの言葉に、私は力強くこくりと頷いた。



イザヤは、うんともすんとも言わなかった……。


***


午後、ドラコがティガの書状を携えてやって来た。


すぐに私は、オーゼラの……かつてはイザヤの、新たにミシルトのものになったという、ティガやリタの待つ、あの館へと出立した。



「……本当に、よいのか?これで。」


迎えに来たくせに、ドラコは道中、何度も私にそう尋ねた。



「うん。新婚さんの邪魔でひきんわ。……それより、ごめんね、こんな身体で……休み休みしか移動できひんくて。」


少しでも震動を受けないように、スプリングの効いた豪華な馬車でゆっくりゆっくりの移動だ。

普通に街道を通れば半日の距離なのに、カピトーリからわずか3里の旧オーゼラ城下街で休み、そこから3里半の宿場街に一泊することにした。


「いや。それはかまわぬが……イザヤは、そなたに、そばにいて欲しかったようだが……」


「……ねえ。ずるいよね。……拗ねられても……ねえ。」



思い出したら、胸が痛んだ。

私がドラコと帰ると決めたときの、イザヤの顔。


……まったく……これも戦略の一手なのに……。