ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

よくわからないけれど、嫌な感じはしなかった。


笑いが納まってから、おもむろにミシルトは言った。

「よくってよ。……たった独りでここへ来た根性に免じて、わたくしは、あなたの存在を認めます。」


……なんじゃ、そりゃ。


私は頭を掻いた。

「いや、別に、私、ミシルトにイザヤの側室として認めてもらいたいってわけでもないんやけど……。」


「そう?では、もう少し実質的に言いましょう。わたくしはイザヤさまとの婚姻の化粧料として、多大な持参金とイザヤさまの元の領地をそっくりそのままいただきました。……あなたは、イザヤさまと元の館で、以前のように暮らせばいいわ。」


恩着せがましくそう言ってから、ミシルトは女王のように宣言した。


「わたくしは、レアダンスモレン湖の北側に新たに館を建てて住まいます。」



予想してなかった構想だった。




イザヤは首を傾げた。

「いや、しかし、あそこは人間の住むところではない。未開の地だぞ。……降嫁した姫君には、相応(ふさわ)しくあるまい。」



……ほら、また、そんなことを。


私は、ため息をついてから、……大事な情報を漏らした。


「イザヤはそう言うけど、ティガはあっちに畑作ったり、有効利用してるってよ。……それに……これは、内緒の話って、ティガに言われてんだけど……ムードラ山脈とレアダンスモレン湖の間に、オピリア遠征のための軍事拠点を作るって。」



ミシルトの顔色が変わった。



「……ほらな。」

と、ニコルスが不敵な笑いを浮かべた。



既に予想していたのかな。



「軍事拠点?……私の領地に?インペラータの基地を作るのか?」

イザヤがふつふつと怒り出した。



「……まあ、私がその話をティガに聞いた段階では、誰の土地でもなかったから。でも、ミシルトの嫁入り道具になったなら……軍事拠点は、西か東にずらすのかもねえ。」


いずれにしても、オピリア遠征はなくならないだろう。



「ミシルトは、愛するオピリア王のために、祖国のインペラータと戦うのね。ニコルスみたいに、カピトーリに滅ぼされた国の残党をかき集めて。……あ、そうか。イザヤもか!」


やっと、わかった。

ミシルトはイザヤの音楽に惚れたんじゃない。

亡国の騎士団長だったイザヤをスカウトしたつもりだったんだ。




「……いささか、期待はずれではありましたけれど。」

ミシルトは鼻で笑った。