……私がこのお屋敷に来てからずっと、イザヤは私のそばを離れない。

せっかく軌道に乗った楽器資料館の建設も、担当役人に任せっきりになってるようだ。


会えなかった時間を取り戻してるつもりなのかな。


どうせ動けないので、私は、イザヤの好きにさせている。

手の掛かるペットで、聴衆で、着せかえ人形で、抱き枕といった役割だろうか。



もちろん、煽られれば官能の残り火が再燃する。

少しでも私が悦楽の吐息を漏らせば、イザヤは喜び勇んで私を組み敷いて貫いた。


……頻繁過ぎるこの行為もまた、傷の治りを妨げてるんじゃないかな。

そりゃ気持ちいいし、……うれしいけどさ。




昼も夜も、食事も排泄も入浴も、何もかも私の世話を焼くイザヤ。


新妻のはずのミシルトとは、このところ、要件のみの会話しかない。


……てかさ。

お姫さん、イザヤのこと、全然好きちゃうやん。


何で結婚ってことになったのかなぁ。


イザヤとミシルトの交わした約定というのが、またよくわからない。

どう見ても、お互いに利用しあいたいだけなんだけどさ……かつての領地を取り返したいイザヤやお姉さんの思惑はともかくとして、ミシルトの利益はいったい何なの?


イザヤに惚れてるって最初の大前提が崩れてしまってる今となっては、私にはミシルトの意図がわからない。


むしろミシルトは、イザヤに興味ないと思うのよね。

……せやのに、何でか、私に対する敵意というか……対抗心……違うな……値踏みして、ミシルト自身と常に比較してるような……そんな居心地悪さを感じる。


不条理じゃない?

やっぱり納得いかない。


***

ようやくイザヤの欲望から解放された後で、ミシルトを呼んでもらった。


新妻然とした清楚なドレスでミシルトはやって来た。