神妙に言われても……いちいち引っかかるわ~。


「知られたくなかったって……そんなん、バレるに決まってるやん。まあ?離れて暮らしてたら、バレへんてか?あほらし!……てか、イザヤは、このままずーっと離れたまんまやと思ってたんやね。」


私に責められて、イザヤは言葉を強めた。


「そうじゃない!聞いてくれ。……結婚したのは、そなたを……そなたと館を取り戻すためだ。」



「……へえ……。」

私は冷ややかにイザヤを見た。



イザヤは、私の反応に傷ついたようだ。



……ほんと、感情の豊かなヒトやなあ。


心がささくれだっている私は、イザヤを甘やかすことを放棄していた。


「お姫さんと結婚したら、オーゼラのイザヤの領地をもらえるって、約束でもしてたんや?……ほんで、お姫さん連れて、館に戻ろうとしてたんや。……へえ~。ほんなら、私、館で、イザヤとイザヤの新しい奥さんを待ってたらよかったんや?……そんなもん、やってられんわ。」


言葉にすればするほど、惨めになった。



イザヤの瞳が揺れている。


悲しみ、後悔、絶望……。


「……そうだな。……そなたの言うとおりだ。私は、そなたのいる館に戻りたい一心で、契約結婚をしたつもりだったが……インペラータでの地位と身分の保証も、俸禄も、約束されて、浮かれていたのかもしれない。……結局、そなたをまた傷つけるということに、思い至らなかった……。」


ぽろっと、イザヤの目から涙がこぼれ落ちた。



ぴ……と、鳥の伊邪耶が小さく鳴いた。

イザヤが心配らしい。


「イザヤ、オチタ。イザヤ。スキ。イザヤ、イザヤ、イザヤ……」


小さな声で繰り返す鳥の伊邪耶が、かわいくて……私は、そっと、指を差し出した。


「いざや。おいで。」


鳥の伊邪耶は、しばし逡巡して……結局、私のところには来ず、イザヤの腕をよじ登って肩におさまった。



「……すまぬ。」

なぜか、イザヤが謝った。


鳥の伊邪耶の飼い主は、もはや私ではなく、イザヤらしい。


「……ペットも、人も、……手放した時点で、自分のものじゃなくなるってことね……。くやしいけど、身を持って理解したわ。」

私はそう言って、目を閉じた。

見たくない、と思った。


かつてあんなに可愛がった愛鳥も、初めてを捧げた……まだ夕べ抱かれた感触が残っているのに……最愛の人も失ってしまった。