二コルスは片手を上げて、部屋から出て行った。


頼り甲斐のありそうな広い背中に、ドラコを思い出した。


***

程なく、二コルスが戻って来た。

鳥の伊邪耶を連れた人間のイザヤを連れて……。



「鳥のいざやって言ったのに。」


一応そう文句を言ってみたけれど

「こいつ、イザヤ団長と一緒にいたいってさ。……何か誤解あるみたいだし、ちゃんと話せよ。団長。」

と、二コルスはイザヤの肩を軽く叩いて、出て行ってしまった。



二コルスの言う通り、鳥の伊邪耶は、イザヤの指にとまったまま、毛繕いをしていた。



重苦しい沈黙に耐えられず、私は口を開いた。

「……二コルスは、イザヤとは旧知なの?」


イザヤは小さく息をついて、やっと話し始めてくれた。


「まあ。互いに国が滅ぼされるまでは、友好国だったからな。我が国にはお飾りの近衛騎士団しかなかったが、ヴァストークは最強の騎馬兵団を抱えていた。……ニコルスどのは精鋭を率いていた将軍だ。」

「じゃあ、ニコルスも亡国の騎士なんだ……。」


あれ?

なんか、引っかかったぞ。


確か、ヴァストーク軍の残党が反乱起こしたり、山賊みたいになったり大暴れして、ドラコが征伐してなかったっけ?

最近やっと鎮圧できたから、シーシアの神殿をそっち方面に新設したのよね?


それって、ニコルスがここにいることと関係してるのかな?



「何で、ここにいるの?ニコルス。インペラータに仕えてるわけじゃないよね?誰に仕えてるの?」


疑問を並べたてた私に、イザヤは苦笑した。


「……ニコルスどののことばかりだな。……そなたは、本当に好奇心が強いな。」

「う。ごめん。……じゃあ、改めて、ニコルスの言ってた誤解って何?イザヤの結婚のこと?」


私は、半身を起こしながら、そう尋ねた。


イザヤがクッションを重ねて背中にあてがってくれた。


介護でしかないんだけど……やっぱり密着すると、それだけでドキドキした。

……ニコルスに抱き上げて運んでもらっても、何も感じなかったから……やっぱり、私、イザヤが好きなんだなあと改めて再確認させられた。



「誤解ではなく、弁解だな。……そなたに黙って、結婚したのは事実だからな。すまない。……できることなら、そなたに知られたくなかった。私はそなたが好きだ。無駄に悲しませたくないし、泣かせたくなかった。……それは、信じてほしい。」