ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「……大丈夫。うれしくて……。ずっと、こうしてほしかったの。……逢いたくて逢いたくて……苦しかった……。」


くっ……とイザヤが小さな呻き声をあげた。

私の中のイザヤが軽く痙攣している。


……ああ……気持ちいいなぁ……。



イザヤは、ゆるゆると動きを緩慢にして……私の顔を覗き込み、キスを繰り返しながら話した。


「……私も、苦しかったぞ。……そなたは私のために館に残ったと、頭ではわかっているつもりだったが……やはり共にいるべきであったと何度も後悔した。……すまなかったな。」


「……うん。私も。だから、来ちゃった。……イザヤ、結婚するの?」


こんな、まだ行為の真っ最中に聞くことではなかったのに、つい口に出してしまった。



さすがに私の中のイザヤは小さくなってしまったようだ。



イザヤは気まずそうに身を起こし、私から離れた。


私も座ろうとしたけど、……あちこち痛くて、動けなかった。




「……イザヤ?」

うんともすんとも返事がないので、なるべく優しい声色で呼びかけてみた。



イザヤは拗ねた子供のように、ちろっと私を一瞥してから、ぷんと顔を背けた。



……逆ギレ?

居直り?


まあ、否定しないってことは……本当なんだろうなあ。





「……ティガに聞いたのか。」

まるで告げ口した犯人をあぶり出すかのような尋問に、私は笑いをかみ殺した。

「うん。宮廷で演奏して、バツイチのお姫さんに見初められたって。……シーシアのいとこで、白い結婚してはったって。」


淡々と答えたら、イザヤがぼそっとこぼした。


「白い結婚は表向きだけ。むしろ経験豊富だな、あれは。」

さすがに、胸が痛んだ。

ぎゅっとしめつけられ……私は丸く身を縮めた。



イザヤは失言に気づいてないらしい。

いや、失言だとすら思ってないようだ。



「まいら?やはり痛むのか?」


心配してくれる愛情に嘘はない。

それはわかっている。


でも、もう一方で、価値観の違いも、わかりすぎるほとわかってしまった。


私がそばにいないから、たぶんイザヤは、当たり前に、複数の他の女性たちと性的に交わっていたのだろう。


モテるって、……単に、憧れられるとかって意味じゃなく、夜のお相手として引っ張りだこってことだったんだわ。


そして、今回、結婚を望まれているというお姫さんとも……既に、そーゆー関係なんだ……。