ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「すっごくかっこよかったよ!しなやかな筋肉の黒豹みたいな身体だった。一緒にバスケットボールしたの。でも、すぐ帰っちゃった。ね。」

リタはティガに同意を求めた。



「帰った?……アメリカに?すぐ?」


ものすごく大事なことだよね?これ。


私はリタからティガに視線を移して、詳しく説明を求めた。



ティガはリタに苦笑して見せて

「ちょっとおしゃべりが過ぎたね。」

と優しくたしなめた……あ……なんか、……すごく……仲良し……。


この2人はどういう関係なんだろう?

かなり近しい気がする。




「ステーツの黒い男性は突如カピトーリに現れました。かの王は彼に便宜を計り、さまざまな情報を得ましたが、彼は窮屈なカピトーリの宮廷も、おせっかいな庇護も嫌がり、気ままな旅を望みました。」


ティガはそう言って、窓際に行き、眼下の湖に目を細めた。


銀色の目が青を反射した。


「オーゼラの国では、イザヤどのが宿を提供し彼をもてなしました。彼はこのレアダンスモレン湖が気に入ったらしく、しばらくの逗留を望みました。」



れあだん……。

そんな長ったらしい名前がついてるのか。

てか、琵琶湖でいいやん。


めんどくさい。


なんか、カタカナが嫌いになりそう。



「それで、リタは仲良くなったの?」

「うん!バスケットボールを教えてもらって、一緒にボートに乗って……いなくなったの。」


どういう意味だろう?


「リタが水鳥を見てるうちに、忽然と姿を消したそうです。湖に浮かんだボートから。」

「入水自殺でもしたの?泳いで逃げたとか。」

「水音もしなかったから……消えたとしか思えない。元の世界に帰ったんだよ。」


リタは自分に言い聞かせるようにそう断言した。


よくわからないけど、私はちょっと希望の光が見えた気がした。



湖から元の世界に帰れる?

……確かに、私、琵琶湖の竹生島からこっちに来たんだもんね。



「はーい。私も湖でボート遊びしたいです~~~。」

手を挙げてそうおねだりした。




「……まあ、まいらの立場ですと、同じように自分の世界に帰れるかもしれないと期待しますよね。でも私に許可する権限はありません。イザヤどのがお帰りになられたら、お願いしてみては?」


ティガはそう言ったけれど、ちょっとイケズっぽく笑ってつけたした。


「そううまくはいかないと思いますが。まあ、気晴らしにはなるでしょう。」