ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

……私が頑張って歩いて歩いて……10時間以上かかりそうだけど……。


「……行けなくはない……か……。」


私のつぶやきを、リタは聞き漏らさなかった。


「決心したの?」


そう聞かれて……私は、こくりと頷いた。


「うん。ちょっと、イザヤに逢ってくる。……て、カピトーリのどこにお姉さんのお屋敷があるのかも見当つかないし、無駄足になるかもやけど。」



するとリタが笑った。

「私、知ってる。地図書いてあげる。……本当は一緒に行ってあげたいけど……ティガに止められるよね……。」

「いや、気持ちだけで。……うれしい。ありがとう。……でも、リタの身体に負担かけたくない。独りで、行ってみる。……乗馬のお稽古、もうちょっとしとけばよかったなあ……。」

「馬だと目立つよ?……地味な格好で普通に歩いてたほうが、悪目立ちしないと思う。」

「そっか。歩くか、あるいは駕籠か馬車か、いっそ舟か……要は、イザヤみたいに、検問で引っかからなければいいのよね。」


関所は1つ。

カピトーリと旧オーゼラ国……現在のオーゼラ州との境界にあるらしい。


馬を捨てる覚悟があるならば関所破りはけっこう簡単で、街道を迂回して山越えすればいいみたい。


……てことは、関所以外は……簡単に国境越えできるのよね。



なんか、楽勝で行ける気がしてきた。

よーし。



「リタ。ちょっとだけ、協力してもらってもいいかな?」


頭に描いた計画を完遂するための助力を頼んだ。

ら、リタは笑顔で請け負ってくれた。

「もちろん!……お願いしたら、たぶん館の使用人たちも力を貸してくれるんじゃない?」

「あー、それは、やめとこう。……ティガにばれたその後が怖いわ。協力してもろたせいで気の毒な目に遭わはったら、申しわけなさすぎるもん。……失敗しても絶対に殺されたり、投獄されたりしないリタにしか、頼めへんわ。」


でもそれだって、ティガの追っ手にうまく捕まったら、の話でしかない。

インペラータの兵士に捕まっても厄介だし、山賊や、盗賊なんかに捕らわれたら、もう、目も当てられない。


……覚悟して、準備しなきゃ。


漠然とした計画をリタに話しながら、着岸した。


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館に帰ると、ティガがイザヤからの書状を手渡してくれた。


「おかえりなさい。リタ、まいら。リタ、体調は?大丈夫でしたか?……まいら、ドラコが持ってきてくれました。どうぞ。」