会話が途絶えるのを待って、思い切って、以前から考えていたことを口に出してみた。

「あの……インペラータには、図書館や公文書館、美術館や博物館もあるのよね?……国に、楽器を専門に扱う資料館を作ってもらえないかしら?……イザヤはそこで楽器の専門家として働かせてもらったら?」



ティガもイザヤも、まじまじと私を見ていた。


唐突すぎただろうか。


私は、補足説明を試みた。

「資本があれば、自分で資料館を作って館長におさまればいいんだろうけどさ、……イザヤに、商売の才覚があるとは思えないし……そもそも、建物を準備することもできないと思うの。いくつかの高価な楽器を売って資金を調達することは可能だろうけど……それって、せっかくのコレクションを散逸させてしまうってことでしょう?それならいっそ、インペラータにイザヤコレクションとして全て寄附して、ね……その代わりに、収納展示するための資料館を作ってもらえないかな?って。楽器の管理はイザヤがするってことで。どうかな?……イザヤは、自由に演奏もできるし、公的な庇護も受けられるし、逆にインペラータはイザヤの監視をしやすいんじゃない?」



すぐに返答はなかった。



沈黙の後、ティガがやっと口を開いた。

「途方もないことを言いますね。……イザヤどのには才覚がないと言ったが……まいらは商売上手かもしれませんね。三方よし、というやつですね?」

「サンポウヨシ?……どういう意味だ?」

「えーと、売り手よし、買い手よし、世間よし……だっけ。売り手と買い手だけじゃなくて社会にも貢献できるのがいい商売なんだって。……てか、ティガ、よく知ってるねえ、そんな言葉まで。」


感心してそう言うと、ティガの表情が少し和らいだ。

ほっとして、私は続けた。

「まあ、この場合は楽器を売るわけじゃないから商売じゃないけどね。……でもせっかくの楽器コレクションだけどさ、このままじゃ切り売りするしか収入手段がないやん?それってイザヤのご先祖さま達にも失礼だと思うの。楽器のためにも、……どうかな?」


ティガは賛同してくれそうな雰囲気だ。

イザヤは?


逆に、借金してまで集めた楽器を寄附することなんかできない……と拒否されてもおかしくない。


ドキドキしながらイザヤの答えを待った。




イザヤは、熟考ののち、おもむろに言った。