……てか、リタは、シーシアとイザヤの初夜が破綻したことは知らないのよね?


それは、まだ言っちゃ駄目なのかしら。



ああ、ややこしい。

誰がどんなことをどこまで知ってて、誰に何を言っちゃいけないのか……わけわかんなくなりそう。




しかたないので、とりあえず、当たり障りない事実だけを言ってみた。


「わかった。言わない。……えーと、今朝、浜の温泉に行くドラコを見たよ。」


「……そう。途中でイザヤどのに逢ったと聞いたけど……まいらも、いたの……。」



ぎくっ。

朝っぱらからイザヤと一緒にいたとバレた?



……やっぱり、よけいなことは言わないほうがよかったみたい。




私は、言葉を選んで、なるべく話題をそらした。

「私は、見かけただけ。眠れなくて湖に出てたの。あ。そうだ。今日からイザヤとオースタ島に行くことになって。……シーシアのそばになるべくいてあげてほしい。」


さすがに、側室のぶんざいで、2人だけの結婚式だの、ハネムーンだのとはとても言えなかった。

まあ、言わなくてもバレバレみたいだけど。




リタは、じとーっと私を見て、それからため息をついた。

「……言われなくても、シーシアさまは、私たちがお守りするけどさ……。今夜から雨らしいよ。……あんた、本当に……イザヤどのと?……それでいいの?」


責められてはいなかった。

むしろ、たしなめられてるというか……リタなりに心配してくれてるというか……。



黙ってうなずいて見せると、リタは眉をひそめた。


「わかんないわ、やっぱり。聖職者のおっさんが好きで、ドラコにミーハーして、何で、イザヤどのに行き着くんだか。」


「……そうね。私もよくわかんない。わかんないけど……ほっとけない……のかな……。」

自分の口から出た言葉に、ちょっと笑ってしまった。


「イザヤが聞いたら怒らはるわ。自己評価高過ぎるのよねえ、あの人。」



リタは笑わなかった。


「……イザヤどの……欠点も短所もあるけど、気のいい、陽気な貴族のおぼっちゃんだし、強いし……シーシアさまを大切にしてくれるならそれでいいって思ってた。」


リタはそう言ってから、頭をガリガリとかきむしった。


「なのに、どうしてこうなるかな?結婚前から側室をつくるとか有り得ないのに!……シーシアさまは、それでも、まいらを頼りにしてるし……なんで?結婚式の翌日から側室と島にしけ込む花婿とか、マジで、わけわかんない。」