言葉に困ってもじもじしていたけれど、悪戯心を刺激されたらしくイザヤの手が私の身体を撫で撫でし始めた。


「え……あの……ひゃっ……ふうう……はっ……あ……やめ……て……」

声のトーンが上がり、鼻にかかった甘ったるい響きをはらんだ。

自分の声じゃないみたいで、すごく恥ずかしい。


イザヤは、際どいところギリギリまで指を這わせながら、飄々と言った。

「そうだな。続きは、あとにするとしよう。……この楽器はまだまだ調音が必要らしい。」


ちょっとくやしくて、恥ずかしくて……私は、ガバッと身を起こして、イザヤから逃れた。


「スケベ!変態!」

まるで小学生のようなことをわめいてしまった。



イザヤは、愉悦に肩を揺らした。


「悪態をついているようだが、ほめ言葉にしか聞こえぬ。」

「はあ?」


なんで?


「いやらしい、って、なじってるんだけど。……意味、違うの?」

伝わるかどうかわからないけれど、訊ねてみた。


イザヤは、楽しそうに言った。

「男たるもの、生涯、女を充分に悦ばせるためには、性欲も精力も強くなければならぬからな。……ティガのように、四六時中とりすました男は、かなり変わり者だぞ。」


「……。」


なんとなく意味はわかったけれど、それは、元の世界とは明らかに違う価値観で……私は本気で返答に窮した。



いつまでもベッドに戻らない私に、イザヤも諦めたらしい。


「やれやれ。頑固者め。……まあ、よい。夜までは、我慢してやる。……今夜は、許さぬからな。」


「知らん知らん!もう!」

私はそう叫んで、逃げ出した。



***


イザヤとのブランチの後、私は再びシーシアの部屋を訪ねてみた。


シーシアは、まだ眠っていた。

なぜか傍らの椅子で、リタもうたた寝しているようだ。


風邪ひくよ?


リタに毛布でもかけてあげようと近づく。

と、リタの目がパッチリ開いた。



「あ。おはよ。」

私の言葉が言い終わる前に、リタは黙って立ち上がった。


そして、私の腕をぐいぐい引っ張って、シーシアの部屋から出た。


「……まいら。シーシアさまには、言わないで。」

リタは泣きそうな顔をしていた。


えーと……それって、やっぱり、夕べの、ドラコとの行為のこと……よね?


私は、黙ってこくこくと何度もうなずいて見せた。