「……利用価値がなければ、私も、自由を奪われるの?」


あ。

余計なこと、言っちゃった。


やばい?



内心ドキドキしてることを悟られないように、敢えてティガに強い視線を向けた。



ティガの銀色の瞳に光が揺れた。


感情が読み取れない。

逆に、鏡のように、自分の虚勢が映っているような気がしてくる。




しばしの沈黙のあと、ティガは口元を緩めた。

「まいらは、イザヤどのの庇護下にあるではありませんか。」



……あ……やっぱり、ティガって……タヌキだ。

そのイザヤの立場が危うくなることには触れないんだ。

怖いな。


でも、それならそれで、いい。

腹を括ろう。



いつか、……敵に回るかもしれない。


ティガだけじゃない。

シーシアも、リタも、ドラコも。



イザヤだけ。

私には、イザヤだけ。



ゴソゴソと、鳥の伊邪耶が顔を出した。

「イザヤ、カシコイ、イザヤ、カワイイ。」


そうね。

伊邪耶も、いつも一緒ね。



イザヤと伊邪耶。

私が、しっかりして、守らなきゃ。



私はそっと鳥の伊邪耶をふところから出して、上に掲げた。


伊邪耶は降りしきるヴィシュナの花びらに興奮したらしく、バタバタと羽ばたいた。


「イザヤ、トンダ……イザヤ、オチタ……」


……そうして、花びらと共に伊邪耶は、へちゃりと落ちてしまった。




「大丈夫ですか?」

私だけではなく、ティガも駆け寄って来た。





伊邪耶は、羽根を中途半端に広げたまま、ずりずりと這ってから、ようやく自分の足で立った。


未熟な指でも、不自由な足でも、再び桜の花びらを追う伊邪耶。



自然と涙がこみ上げてきた。



「……大丈夫じゃないと思う。でも、諦めない。自分で、何とかする……。」

意地を張っているつもりはなかったけれど、私はそう呟いた。






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第4章「花散るとき恋に我死ぬ」が終了しました。
あと3章分、がんばります。
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