……うれしかったし……好感度が上がったのは自然なことだと思うのよね、うん。

結果的には、そんなイザヤだから、好きになった。

かなり楽観的というか、没落しそうでマジで不安だけど……だから、ほっとけないと思った。


今は、元の世界に帰れるより、イザヤのそばにいたいと思ってる……。


あはは。

私も、イザヤに感化されて、頭がお花畑になってきたなあ。


……ヴィシュナの花。

また、鳥の伊邪耶、食べるかしら?




窓辺に寄って、花を見た。

淡いピンクの桜にしか見えないかわいい花々が、今はもう満開だ。


「シーシア。ほら。ヴィシュナ、綺麗。……シーシアのおかげで、春になる前に観られたわ。ありがとう。……もしかしたら、春までココにいられないかもしれないのよね?」


そう言ったら、シーシアは困ったような顔をしていたけれど、近づいてくる気配はなかった。


お花、興味ないのかな?



「……あ、ティガや。誰かと一緒や。」


少し離れたところで、ティガが馬上のヒトと話していた。

カピトーリへの使者だろうか。

武装はしてないけれど、宮廷貴族という感じではない。


昨日、次々に知らせをもたらせた早馬のヒトたちかな?



「あれは……斥候(せっこう)?」


いつの間にかすぐ側にやってきて同じ窓を覗いていたシーシアが、訝しげに呟いた。



「……斥候って……ただの早馬のお使いのヒトじゃないの?」

「そのときどきで、任務は当然、変わると思いますわ。……わたくしの婚姻が成立したと嘘の報告をしなければいけないので、その関係の根回しではないでしょうか。」

「……ふうん。……あ、こっち観た!」


2人の視線を感じたのか、ティガは眩しそうに見上げていた。


こういうとき、窓、開かないのがもどかしい。



とりあえず、手を振ってみた。



ティガは、シーシアの姿を見つけたからか、恭しくお辞儀した。



「シーシア、下、行くけど、一緒に来る?」

もちろん来ないだろうと思ったけど、念のためにそう声をかけてみた。


シーシアは逡巡ののち、諦めた。

「……残念ですが、わたくしは参れません。……あとで、ティガに来てくださるよう、お伝え願えますか?」

「わかった。ほな、行ってくる!」

「……まいらさまの自由なお心とお立場が、わたくし、本当に……うらやましいです。」