「ねえ、まいらさま。ここはとても美しい国ですわ。でも、この国の豊かなみのりは、カピトーリが吸い上げていますのよ。」


「……既に、実質的には、植民地ってことよね。」

何となく、気づいてた。

豊穣なのに、この国がなぜ貧乏なのか。


まあ、イザヤの借金は楽器道楽のせいやけどさ。 



「カピトーリがこの国を存続させていたのは、シーシアがイザヤと結婚するから、だったのでしょう?……結婚しないなら、もうこの国は不要なの?」

これはただの当て推量だった。

でも、たぶんそういうことなんだろうって、確信していた。


シーシアは、苦笑した。

「まいらさまは、本当に……ティガの言う通りね。そこまでわかっていらっしゃって、どうしてイザヤさまのお側にいらっしゃるの?」


「最初に私を見つけたの、イザヤだし。……今は、イザヤが好きだから。仕方ない、って感じ?」

肩をすくめて、そう答えた。



シーシアは、心底不思議そうだ。


私は、さらに突っ込んで聞いてみた。


これは推測ですらない、ただの……勘だ。

でも、ティガとの会話で感じた心の機微を鑑みれば、自ずと見えてくるものもある。


「この湖は、イザヤのものじゃなくなるのね?……あの神殿も壊して……でないと、ティガは入れないんですものね。……ティガが、シーシアよりだいぶ早くココに来たのは、湖と異世界人の関係を調べたかったからでしょう?」


言ってて笑えてくる。

たぶんティガ本人相手なら、こんな発破をかけることはできない。

すぐに論破されるか、誤魔化されるだろう。


でもシーシアは、気の毒なほど嘘のつけない聖女だ。


「そこまでご存知でしたか。すばらしいですわ。まいらさま。やはり、ティガの言うとおり、わたくしたちにはない、何か特殊な能力がおありなのでしょうか。……ますます、イザヤさまと共に凋落なさることはお止めしなければ。どうか、わたくしたちとご一緒に、」


「わかった。わかったから、シーシア。ちょっと落ち着こうか?」


シーシアの瞠目が開き、恍惚とした表情になり、……部屋の気温が明らかに上昇した。


窓の外のヴィシュナの木は、冬だというのに、一気に花開いていく。


怖い……。

神の花嫁パワー炸裂してるよ……。