……あらら。

イジメるつもりはなかったんやけど……。


いや。

シーシアの良心の呵責を刺激して懺悔を引き出そうとしてるんだから、イジメてるのと大差ないか。



ごめんね。

でも、こっちも、命がけなんだ。




私はなるべく優しい気持ちをひねり出して、シーシアの背中をさすって慰めた。

「お願い。泣かないで。誰もシーシアを責めてないから。そんなに、夕べの儀式、つらかったの?」


キラキラ輝くアメジストの涙をこぼしながら、シーシアは言った。

「……ごめんなさい。まいらさま。わたくし、……わたくし、やはり、どうしても……イザヤさまと結婚できませんでした。……儀式は辞めていただきました。」


「え……辞めたって……。……えーと、そのぉ……。」


さすがに聞きづらくてモジモジしてると、シーシアが頷いた。


「はい。いたしておりません。わたくしは、これまでと何ら変わらず、乙女のままです。……ティガが、そう取り計らってくれました。……いずれは、再び、神にお仕えできたらと、思っています。」


どうやらシーシアは、自分の言葉に力を得たらしい。

さっきまでの泣き濡れた顔が、恍惚とし始めた。


後光は見えないけれど……なんか……暑くなってきたぞ……。


てか、言質は取れたな。

よっしゃー。

目的達成!


「じゃあ、シーシア、カピトーリに帰っちゃうの?」



シーシアは、やっとティーカップを受け取ってくれた。

「ありがとうございます。いただきます。……いつかは、わかりませんが、たぶん、ティガが、帰れるように取り計らってくれます。」


そう言って、シーシアは紅茶に口を付けた。


「ま……あ。美味しい。」

シーシアの白い顔がほころんだ。



「よかった。お口に合って。……そっか。帰っちゃうんだ。残念。ティガとリタも帰っちゃうのよね。……淋しくなるな。」


そう言ったら、シーシアは少し首を傾げた。


「まいらさまも、カピトーリにいらっしゃると思っていましたけど。」

「へ?なんで?」

びっくりした。



シーシアは、当たり前のように言った。

「まもなくこの国はなくなりますもの。ティガは、まいらさまから、新しい国の発想を得ていると言ってますわ。」


新しい国?

それって、どういうこと?


それに、まもなくって……。

そんなに差し迫っているの?


ドキドキしてきた。