ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

めっちゃ驚かれてしまった。


……まあ、そりゃそうか。

初夜の翌朝の新婚さんの寝室に、側室が乗り込むとか、普通は有り得ないか。



私は、敢えて笑顔を見せた。


「うん。昨日はバタバタしててシーシアとしゃべれへんかったから。」


無邪気に、旧知の友人然として、そう言ったら、身構えた料理人さんも、ホッとしたようにうなずいてくれた。

「そうですか。……そうですね。では、すぐに準備いたしますね。」

いつもお湯は沸いているので、言葉通り、お茶のセットはあっという間だった。


「ありがとう。」

そう言って、お盆を取ろうとしたけど、渡してもらえなかった。


「お運びいたします。」

当然のように、料理人さんが持ってくれた。


「なんか、お仕事増やしちゃったみたい。……ごめんなさい。」


「謝ることじゃありませんよ。いつも私達にもお心遣いありがとうございます。でも、これからは、……北の方さまも来られましたので、まいらさま、もう少し尊大に振る舞ってください。」
 

まさかのダメ出しをされてしまった。


「偉そうに?するの?……なんで?……むしろ、シーシアを立てなきゃいけないのに?」

逆じゃないの?


料理人さんは、苦笑した。

「私どもには、政治はよくわかりませんし、ましてや、隣の国の宗教なんぞ何の興味もありません。わかることは、大切な大切な御館さまのことを、北の方さまは嫌ってらっしゃって、まいらさまは大切に想ってくださっているということだけです。……おのずと、みな、まいらさまをお慕いいたしますよ。ゆくゆくは、まいらさまに家政を取り仕切っていただきたいと話しています。」


「……えー。うれしいし、ありがたいけど……私がでしゃばると、シーシアが肩身狭くならはるわ。さすがに、それは、かわいそう……。」


嫌々嫁いで来てるのに……せめて、イザヤ以外は歓待したげようよ。



「やれやれ。お優しいですな。まいらさまらしいですが。」

料理人さんは、肩をすくめて笑った。



 
北の棟へ続く扉の前にも、従者はいなかった。

真新しい廊下を進み、シーシアの寝室の扉をノックした。



「……はい。」

蚊の鳴くような小声が、ようやく聞こえてきた。


「シーシア?おはよう!モーニングティー飲まへん?」

敢えて元気に声を張った。



「まあ!まいらさま!?まいらさまですの!?」

シーシアの声も大きくなった。