ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物


孝義くんのこともシーシアのことも、もう、いいよね。

私を見つめるイザヤの瞳が優しくて、あたたかくて……


ふふっ……と、私は小さく笑った。



「今度はなんだ?」

「……イザヤの瞳。鳥のいざやに向けるのと、やっとおんなじになってくれた……。幸せ。」



イザヤは、キョトンとして、それから笑った。

「おかしなことを言う。鳥と同じでいいのか?」


「自覚ないだろうけど、イザヤ、鳥のいざやには、すっごく優しいんだもん。溺愛状態。……うらやましかったの。愛玩物(ペット)に嫉妬するのも変だけど。」


シーシアには嫉妬しないのにね。

歪んでるなあ。


苦笑する私に、イザヤはよくわからないことを言い出した。


「あやつにも、あの女にも、嫉妬なんぞする必要はない。……むしろ、そうだな……そなたは、楽器……かな?」

「楽器て……モノやん!心ないやん!」

「そうじゃない。……欲しいと思ったら、どうしても欲しくて欲しくてたまらなくなって、無理しても手に入れる。どんな音を奏でるのか、楽しみで仕方ない。手にすれば、期待を凌駕するすばらしさに胸が高鳴り、踊る。いくら弾いても飽きない。もっともっと、自由に、高らかに……鳴かせてやりたい……。愛しくて愛しくて、たまらない……。」


ぎゅーっと、イザヤが私を抱きしめた。



熱い……。

イザヤが、滾っているのがわかった。


もう、それ以上の言葉は必要がなくなった。



孝義くんに捧げるはずだった私の初めては、異世界の住人のイザヤのものとなった。



当たり前なんだろうけど、イザヤは慣れていたし、巧みだし、優しいし、……情熱的だった。


私の恥じらいも痛みも、全て、イザヤは溶かしてしまった。


そして、イザヤの望むままに、私は、自由に、高らかに鳴いた。



天上から光が差し込み、天使か天女か女神でも舞っているように感じた。

祝福されているのだと思えた。


神殿の女神さまたちか、お墓で眠るイザヤのご先祖さまたちかはわからないけれど……とても温かい安心感に包まれた。




幸せだ……。




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「……血が止まらないな……。朝までゆっくりさせてやりたいが……さすがに、ティガに知られたら、まずいか……。」

私に熱を放出したあと、イザヤはそうつぶやいた。