ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

でも、本当は、とても優しい、そして淋しいヒトだとわかった。

ご両親を亡くし、妹さんを惨殺され、5年も待った婚約者に拒否られて……心、ズタズタなんだろうな。



かわいそうな、イザヤ。

私……慰めに、なれるといいんだけど……。

……シーシアの身代わりに……。



「それでも、イザヤが大好きやねん。」


そう言ったら、私も泣けてきた。

目尻に滲んだ涙が、こめかみを伝い流れ落ちた。



「タカヨシよりも?後悔しないか?」

繰り返し、確認するのは、本当に自信のない証だろう。


私は、迷いなく、頷いた。

「しない。もし今、元の世界に帰れる方法があると言われても、イザヤを独りにしたくないから、帰れない。ずっとそばにいる。シーシアの代わりにはなれないだろうけど、私がイザヤの慰めになれるなら、それでいい。」


なんか、本妻にしてもらえない愛人みたいなこと言ってるよ、私。


……あ、そうか。

私、側室だ。


正しく、側室なんだわ。


不思議ね。

イザヤの中に、シーシアへの想いがちゃんとあったと理解してからのほうが、私……イザヤを愛しく感じてるみたい。

矛盾してるよなあ。


でも、そんなイザヤが、好きみたい。




「タカヨシより、私を選ぶのだな?」


しつこいイザヤに、ちょっと笑って見せた。


「私に、選ぶ権利なんかないから。……孝義くんにとっては対象外だったし。むしろ、イザヤが、……これから先、もっと魅力的な女性や……シーシアを選ばないか、だけが、心配。」


……言ってて気づいた。


イザヤに抱かれたら、もう、本当に、イザヤの寵愛だけをよすがに生きていくしかないんだなあ、って。

悲しい立場。

……卑屈にならないように、せめて、……勉強しよう。




「……タカヨシは、どうして、まいらを自分のモノにしない?」

まだ聞くか?


もう……。

どうしても、知らないと気が済まないらしい。


私はあきらめて、説明した。


「孝義くんは、私のお母さんの同級生なの。学生のころ、お母さんのことが好きだったの。お母さんは、孝義くんの亡くなったお父さんと養子縁組してから、私のお父さんと結婚したから……孝義くんは、私の義理の叔父でもあるの。」


「そなたのお母上殿と、同い年ということか?」


こくりと、頷いた。



イザヤが、小さく息を吐いた。