ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

「私、学生やから、そーゆーの、関係ないのに。」


「しかしタカヨシは学生ではないのだろう。何者だ?奥方の死因は?」


……やれやれ。


「私も色気ないけど、イザヤもさぁ……何も、今、聞かなくても、」


尖らせた唇は、突然イザヤの唇で塞がれてしまった。


……これは……黙れと言う意味なのだろうか。

それとも、普通に、キスなのだろうか。



忙しくまばたきしてると、イザヤは、肩を奮わせた。


「目を閉じないか。くすぐったい。……まったく、そなたは、こんなことも知らないのか。」


笑いながら文句を言うイザヤ。


なるほど、私の睫毛が忙しく動いたのが邪魔だったらしい。



「……びっくりした……。」


ポカーンとしてたら、もう一度イザヤの綺麗な顔が近づいてきた。


至近距離で見つめていたい……。

でもまた怒られそうで、私はしぶしぶ目を閉じた。



「イイ子だ。」

吐息混じりの低い小声でそう褒められた。


目を閉じて聞くと、イザヤの声の良さが際立って……背筋がぞくぞくした。


読経で鍛えたい孝義くんの野太い美声はもちろん大好きだけど……繊細そのもののイザヤの声も……もはや、心地いい。




……わぁ。

さっきより優しい唇の感触がする。


キスだ。

キスがきた。


くすぐったいなあと頬が緩んだ。

 
すると、にゅるんと、イザヤの舌が割り込んで来た。



ふあぁあぁあぁ。

舌!

舌が、にゅるにゅる!

これが、ディープキスか!!!


なんだ!これ!

めちゃめちゃ……気持ちいい……。



ふるふると、勝手に身体が震え始めた。

体に力が入らない。

全神経が口の中に集中して、イザヤのくれる優しい蹂躙を享受している。


ずる……ずる……と、いつの間にか、私の身体は下へ下へとずり落ちて、イザヤの腕一本で支えられていた。



ようやくイザヤの顔が、続いて身体が、私から離れる。


と、私は、そのままへちゃりと地面に崩れた。



……腰が抜けた……。



這いつくばる私を、イザヤは助け起こし、そのまま抱き上げた。


慌てて私はイザヤの首に腕を回して、落ちないようにしがみついた。


目の前に、再び、きれいなお顔。


唇が、濡れて光ってる……。