ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

見上げたら、イザヤも涙をこぼしていた。


「……私は……あんな女……待ってなど、いない……」


しゃくりながら強がっても、真実味ゼロ。


でも、それがイザヤのプライドなら……私は、微笑をはりつけて、頷いて見せた。

「うん。でも、私は、待ってた。イザヤが私を抱いてくれるのを。……ご存じの通り、色気も胸もないけど……。」


ガバッと、イザヤが私を抱き寄せた。

苦しいぐらい、抱きしめられて……ようやく、私も全てを受け入れる覚悟を決めた。


結局、こうなるのよね。

かわいくない女。

どうせ歩み寄るなら、イザヤの思惑に乗ってあげればいいのに。

口答えして、やりこめて、やっと気持ちが晴れて、折れることができる。


……素直じゃないなあ。

一癖もふた癖もある、この厄介な性格。

誰に似たのやら……。




「……この世で一番、私が好き……か。」

頭の上でイザヤがつぶやいたのか、問い掛けたのか、よくわからなかった。

 
「うん。好きよ。」

とりあえず、そう念押しした。


 
「では、二番目は誰だ?まいらは、どんな男が好きだ?」


今、それ、聞く?


「て、言われても……。」


ドラコは好みのタイプな気がするけど、リタとそーゆー関係になっちゃってたしなあ。


「該当者いない。ずっとイザヤの館にいたし。」

今日はじめて王城に行ったけど、イザヤのお姉さんに知己を得たぐらいしか、新しい出会いはなかった。




でもイザヤの言いたかったのは、そうじゃなくて……

「タカヨシ、は、もういいのか?」


元いた世界で、私がずっと恋していた孝義くんのことを言いたかったらしい。


……てか、忘れてなかったんだ……。

イザヤって、なんとなーく……粘着質っぽい……。


そーゆーところも、もちろん、嫌いじゃない。

多少めんどくさいけど、それも愛かなー、なんて。


私は苦笑して見せた。

「よく覚えてたね。孝義くんは、……そうねえ……私にとって、信仰の対象みたいな感じかな。物心つく前から、敬愛していたから。……奥さんが亡くなられてから、孝義くん、周りから再婚を勧められてて……私も立候補したかったんだけど、いつまでたっても対象外。……それでも、せめて近くに居たかったけど……ココじゃあ、どうしようもないしねえ。」



「……どんな男だ?身分は?地位は?家柄は?財産は?」


イザヤの詰問がおかしくって、私はちょっと笑ってしまった。