ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

違う違う!


私は、慌てて否定した。

「そうじゃなくて。……もう!わかんないかな!イザヤが心配なの。シーシアって、あんなんだけど、カピトーリでは権力あるみたいよ?そのシーシアが虫のようにイザヤを嫌ってるのよ?離婚なんかしたら、地位や生活どころか命の保証もないんじゃない?」


「ああ。そうだな。長年、婚約を解消しなかった理由が、それだ。」

あっさりとイザヤは認めた。



「なのに、白い結婚でいいの?」


重ねて尋ねると、イザヤは少し言い渋って、それから天を仰いだ。


そして、苦笑した。

「やはり、私に隠し事は、無理だ。……特に、そなたを欺けるとは思えん。」

「……うん。そう思う。てか、イザヤは、最初から、何でも話してくれるのがうれしかったの。……だから、言って。何でも。話して。」


繰り返して、おねだりしたら、イザヤは暴露してくれた。 

「あの女との婚姻を有耶無耶にすることを条件に、ティガが、カピトーリでの庇護を約束したのだ。立合の者たちも、私も、だ。」


イザヤの説明に、私は首を傾げた。


「ティガって、そんなに力があるの?シーシアより?1万の兵を率いるドラコより?……ナニモノ?」


「……現在は、ナニモノでもないな。錬金術士を自称しているが。……しかし、カピトーリが周辺国を平らげた後に、国政に参加すると聞いている。いずれは、宰相になるだろう。」

「へ?宰相?……へ?……錬金術士……へ?」


開いた口がふさがらない。

ティガ……そういうヒトだったのか……。


てか、お先真っ暗なイザヤより、よっぽど頼り甲斐が……もにゃもにゃ。



「そっかあ……。じゃあ、シーシアの一件で、ティガに恩を売ったんだ。……うん。いい判断だと思うよ。それ。情緒不安定なシーシアより、冷静なティガのほうが信頼できるもん。安心安心。」


敢えて明るくそう言ったら、イザヤは困った顔を見せた。


「しかし、このことは、誰にも言わないはずだったんだ。……まいらにも内緒だと、わざわざ口止めされたのだが……。」

「あー……。」

言っちゃったね。

ケロッと、吐いちゃったね。
 

「……じゃあ、聞かなかったことにする……。……て、ごめん。絶対、バレる自信あるわ。無理でしょ。そんなの。……むしろ、ティガ、無理難題ふっかけて、約束を反古にするつもりなんじゃない?」


私の言葉に、イザヤは目を見開いた。