お互い、そのほうが都合がいいから、一緒にいるって感じ。

私は、孝義くんしか見えてなかったし、至信くんは……男女間の恋愛だけじゃなくて家族を含めた他者への愛情を信じられないんだって。

頭はいいし、顔もいいし、めっちゃお金持ちのぼんぼんやから、しょっしゅう(こく)られてはるんやけど、それがまた、煩わしくて、ますます恋愛不信になってるみたい。


……それでも、私が、ずーーーっと孝義くんに恋い焦がれてるしつこさだけは評価してくれてたのに、……今の私を見たら、至信くん、呆れはるかな。


孝義くんへの想いが消えたわけじゃないのに、異世界で、会えないし、戻れないからって……婚約者のいるイザヤの側室とか言われて、その気になって……我ながら、なんて不誠実なんだろう。


この悲しみも、苦しみも、痛みも、すべて、自業自得だ。

私は、誰も恨んじゃいけない。


イザヤは、最初からシーシアのものだったんだから。



……そっか。

これって、結局、ただの「横恋慕」だ。




そして、2人が正式に結婚した今から、私の想いは「不倫」なんだ。





至信くん、言ってた。

自覚して不倫するには、開き直って楽しむ図々しさが必要だと。


ないものねだりして泣いたり責めるより、面倒を妻に押し付けて「ええとこ取り」してるラッキーに笑え、と。


……ちなみに至信くんのママはシングルマザーで、レズビアンだけど、至信くんの本当の父親とは性的主従関係なんだそうだ。

話を聞けば聞くほど、至信くんのママは、ふつうに、至信くんの父親を心から愛していると思うんだけど……なぜか、認めないらしい。


ややこしいわ。

オトナって、複雑。

一筋縄ではいかない。


……もしかして、消化できない矛盾を抱えて生きるのが、オトナになるってことなのかな。




私も、……イザヤとシーシアの結婚をちゃんと受け入れて、その上で、自分の立場をもう一度見つめ直さなければいけない。


こんなふうに泣いてても、何もはじまらない。

私は、被害者じゃないんだから。



うん。

やめよう。

泣くのは、今だけにしよう。


涙が枯れるまで、飽きるまで泣いて、それで終わりにしなきゃ。




気がついたら、涙はもう、出てなかった。



……枯れたというよりは……落ち着いた……諦めた……悟った……かな?