普通なら、忘れ物をしたら、戻る、とか、帰るって訳されるんじゃない?

行く、ってことは……ティガは研究室以外の場所へ行くと、ちゃんと伝えてたんだ。

私、勝手に、研究室へ戻ると解釈しちゃったのね。


ティガ、北の棟に行ったんだ……。

何しに?


従者くんたちの言葉から推測すると、シーシア、初夜の儀を、泣きわめいて嫌がったのかな。

イザヤも、キレて、怒鳴ったりしてそうだなあ……。


初夜が修羅場とか……きっついなあ……。


……あ、そうか。

ティガはシーシアを宥めに行ったのね。


……かわいそうな、イザヤ。

面子、丸つぶれじゃない?


イザヤのお姉さんの言った通りになっちゃったのかな。


……長い夜になりそう……か……。





何とも言えないモヤモヤを抱えたまま、私はティガの研究室へと戻った。

でも、研究室の中に入ることは、はばかられた。

中から、漏れ聞こえて来るドラコの声は……泣いているようだ。

しかも、泣いてるのはドラコだけじゃないみたい。

リタも泣いていて……しかも、それが、……なんか、いつものリタじゃなくて……。



明らかに、2人は、何らかの性行為の真っ最中だと推測できた。


……えーと……これは……。

以前イザヤが誤解した状況ってことかな?


つまり、シーシアの初夜から現実逃避したくてお酒に酔ったドラコに迫られたリタが、今回は、ほだされて……抱かれてる?


うひゃー。

どひゃー。

ひゃーひゃーひゃー。


いつの間にか、吐息混じりの湿った声を漏らしていたリタが、今度はひゃんひゃんきゃんきゃん弾んだ声を挙げだした。


絶対!やってるし!!!

間違いないでしょ!これ!

やだーもうー!

恥ずかしくて、聞いてられないー。


でも、鍵がないと、私、自分の部屋に入れない。


……どうしよう。


冬じゃなければ、適当にそのへんに寝転がっちゃうのもありだけど……さすがに、お酒も入ってるし、凍死しちゃうかもしれない。


うーん。

イザヤとシーシアの初夜の儀の邪魔をするわけにはいかないとはいえ、リタとドラコのたぶん初めての夜を中断させるわけにもいかず……。



結局、私は、2人の行為が終わるまで、おとなしく待っているしかないのかな。

とほほ。

…なんだかなあ……。


しかたなく、少し離れた場所で座って待っていよう……と、歩き出した……ら、ドアが開いた。