……なんか……気恥ずかしいな。


「ありがとう。」

小さい声でつぶやいて、ティガに手を引いてもらって歩いた。


ティガは、私の足元に注視して、ゆっくりゆっくり歩いた。



「……さっきまであんなに賑やかだったのに……静かね。」


もしかして、初夜の儀、始まったのかな。


……いかんいかん。

考えないようにって、酔っ払ったのに……結局、考えちゃってるよ。



こみ上げてくる涙をこらえて黙り込んだ私に、ティガが言った。

「……我慢しなくていいんですよ。」

「だって……。」


気を抜くと、本当に泣いてしまう。


「むしろ、まいらが平然としてるほうが、イザヤどのはおもしろくないんじゃないですかねえ。」


……ふむ。

ティガの言う通りかもしれない。



「……ほんと……めんどくさいヒトね……。なんで、あんなヒトがいいのかな。私。……ずっと好きだったヒトは……もっとストイックで自分に厳しい、本当に心の強いヒトなのに……。」


物心ついた時から、大好きだった孝義くん。

もう、逢えないのかな。



遠慮がちに、ティガに聞かれた。

「リタに少し聞きましたが、だいぶん年上の聖職者だそうですね。……それは、本当に恋なのですか?」


改めてそう確認されると、ますます自信がなくなってくる。

そもそも、釣り合うなんて思ってないけどさ。


少しでも近づきたくて……これでも、私、がんばってたんだよ。


「もう、わかんない。一応、親戚なの。お母さんの学生時代からの友達で、孝義くんはずっとお母さんが好きだったの。……でも、私は、全然、お母さんに似てなくて……。せめて、私にお母さんの面影があれば、孝義くん、私のこと、好きになってくれたかなあ。」


支離滅裂だ、私。


どこまで通じたのかわからないけれど、ティガはうなずきながら、聞いてくれた。

「お母上どのと同い年の聖職者とは。……妻帯不可能なかたなのですか?それとも既婚者ですか?」


……なるほど、一般的には的確な問いだな。

ちゃんと通じてるらしい。


私は首を横に振った。


「2年前に奥さん、病気でなくならはってん。子供もいはらへんから、跡取りを作るために再婚を迫られてはるけど……孝義くん自身は、親戚を養子に取ればいいって思ってはるから……再婚する気、ないのかもね。」

「……では、本当に、まいらの片想いということですか?」