ティガの言葉にも、私としては引っかかりを感じるのだけれど……反論するのもめんどくさいので、うなずいて見せてから、黙ってお酒を飲んだ。


正直、味なんかわからない。

自棄酒(やけざけ)というつもりはないけれど……今夜だけは、何も考えることなく、意識を失って、泥のように眠りたかった。



ドラコもまた、わんこそばのように、休むことなくグイグイと盃を飲み干し続けていた。

ティガの大切なお酒はあっという間になくなり、その後は、いろんな種類のお酒を、ただひたすら、4人で煽った。


お酒にめっぼう強いというドラコも、やっと酔ってきたようだ。

「シーシアさま……。」

何度もそう呟いては、さめざめと涙を流し、拳を床や壁に叩きつけて、手を血まみれにした。


その都度、見かねたリタが、手当をしてやっていた。


……けなげなリタに、関係ないのに、私が泣いてしまいそう……てか、泣けた。



冷静だったティガも、やはり酔っているのだろう。

「シーシアさまのご成婚を機に、そなたも身を固めてはいかがかな?」

と、双子のかたわれに結婚を勧め始めた。



リタの顔色が変わったことには気づかないのか、ティガは続けた。

「家のためにも、そなた自身のためにも、そろそろ落ち着いてくれると助かるのですが。」



ドラコは半ば閉じかけた目で、じとーっとティガを見た。

そして、大きくかぶりを振った。

「……私に、家庭人は、向かぬよ。いずれは、どこかの戦場で討ち死にするのが関の山だ。不用意に結婚なんぞしてしまったら、残された家族が、かわいそうだ。」



うーん、かっこいい。

やっぱりイイ男だよなあ……ドラコ。


どうして、私は、こんなに素敵なヒトも存在しているというのに……ヒトの夫になってしまうイザヤのそばにいたいのだろう。


……いかん。

また、泣けてきた。



ごしごしと目をこすり、涙を払った。



……もう、充分酔っぱらったから……眠れるよね?



「寝る。……お先に失礼します。……おやすみなさい。」

突然、私はそう言って、立ち上がった。



「大丈夫ですか?まいら。」

「ん。大丈夫。……まっすぐ、歩けるよ。ほら。」

ティガにそう言って、私はふらふらと歩いてみせた。


足がもつれた。



「……そうですね。でも、まあ、階段もありますので、お部屋の前まで、お送りしましょう。そのまま私も部屋に戻ります。」

リタとドラコに声をかけてから、ティガは私に手を差し出した。