「いざや!大丈夫?」
慌てて、伊邪耶を拾い上げる。
伊邪耶は、私の手を踏み台に、ティガの手の中のオーツ麦に飛びつこうとしていた。
「イザヤ。オチタ。」
「わかったわかった。ティガ。それ、ちょーだい。いざやの大好物なの。少し大きなほう。オーツ麦って言うの。小さくてツヤツヤしてるのが、カナリアシード。」
そう言って手のひらを差し出すと、ティガは数粒だけ私にオーツ麦をくれた。
伊邪耶の目の前に差し出すと、目の色を変えてオーツ麦に飛びつき、器用に実を少し開き皮の内側の白い部分をシガシガと噛んで食べた。
伊邪耶は偏食だ。
個体によって好みは千差万別らしいけど、それにしても伊邪耶は極端だと思う。
あわ、ひえ、きびはあまり好きじゃないらしく、カナリヤシードも微妙。
ペレットやボレー粉、塩土に、カルトボーンには見向きもしない。
野菜は囓って遊ぶ程度。
心配なのでビタミン補給のためのお薬を飲み水に必ず混ぜている。
そんな伊邪耶の大好物は、オーツ麦。
……それ以外の餌は、自分からは一切食べようとしないくせに、オーツ麦にだけは突進してくる。
ひまわりの種も、外の堅い皮を剥いてあげると大喜びでがっついてくるけど、自分では剥けないらしく食べられない。
「なるほど。オーツ麦。オートミールになる麦ですね。……半分もらっていいいですか?」
ティガは疑問形で聞いたけど、私に拒否権はない気がする。
「どうぞ。……育てるんですか?」
当然とばかりに、ティガはうなずいた。
「あのぉ、それ、確か、北海道、あー、寒い地方で栽培する植物だったと思う。暑いところには播かないほうがいいです。」
適当にそう言ってみただけなんだけど、イザヤもティガも、私に知識があると勘違いしてくれたみたい。
「そうか。では寒冷地に播いてみよう。それから、そなたにも食事と着替えを与えよう。その服は、通気性が悪そうだ。」
イザヤの言うとおり、濡れた雨合羽は蒸れてちょっと気持ち悪い。
早く脱ぎたい……。
***
「先ほどのまいらの質問に答えましょう。間もなく夜明けです。ここは、イザヤどのの館(やかた)の離れです。私の研究室と申しましょうか、実験室と申しましょうか……。」
「実験って……」
まさか人体実験じゃないよね?
ティガは、何も言わず、ただ微笑した。
慌てて、伊邪耶を拾い上げる。
伊邪耶は、私の手を踏み台に、ティガの手の中のオーツ麦に飛びつこうとしていた。
「イザヤ。オチタ。」
「わかったわかった。ティガ。それ、ちょーだい。いざやの大好物なの。少し大きなほう。オーツ麦って言うの。小さくてツヤツヤしてるのが、カナリアシード。」
そう言って手のひらを差し出すと、ティガは数粒だけ私にオーツ麦をくれた。
伊邪耶の目の前に差し出すと、目の色を変えてオーツ麦に飛びつき、器用に実を少し開き皮の内側の白い部分をシガシガと噛んで食べた。
伊邪耶は偏食だ。
個体によって好みは千差万別らしいけど、それにしても伊邪耶は極端だと思う。
あわ、ひえ、きびはあまり好きじゃないらしく、カナリヤシードも微妙。
ペレットやボレー粉、塩土に、カルトボーンには見向きもしない。
野菜は囓って遊ぶ程度。
心配なのでビタミン補給のためのお薬を飲み水に必ず混ぜている。
そんな伊邪耶の大好物は、オーツ麦。
……それ以外の餌は、自分からは一切食べようとしないくせに、オーツ麦にだけは突進してくる。
ひまわりの種も、外の堅い皮を剥いてあげると大喜びでがっついてくるけど、自分では剥けないらしく食べられない。
「なるほど。オーツ麦。オートミールになる麦ですね。……半分もらっていいいですか?」
ティガは疑問形で聞いたけど、私に拒否権はない気がする。
「どうぞ。……育てるんですか?」
当然とばかりに、ティガはうなずいた。
「あのぉ、それ、確か、北海道、あー、寒い地方で栽培する植物だったと思う。暑いところには播かないほうがいいです。」
適当にそう言ってみただけなんだけど、イザヤもティガも、私に知識があると勘違いしてくれたみたい。
「そうか。では寒冷地に播いてみよう。それから、そなたにも食事と着替えを与えよう。その服は、通気性が悪そうだ。」
イザヤの言うとおり、濡れた雨合羽は蒸れてちょっと気持ち悪い。
早く脱ぎたい……。
***
「先ほどのまいらの質問に答えましょう。間もなく夜明けです。ここは、イザヤどのの館(やかた)の離れです。私の研究室と申しましょうか、実験室と申しましょうか……。」
「実験って……」
まさか人体実験じゃないよね?
ティガは、何も言わず、ただ微笑した。



