私は慌ててフォローした。

「ごめんごめん。そうゆうことじゃないよね?えーと、衣装……じゃない、ドレスとか髪型とかの話よね?」


私はくるりと半回転して、イザヤにぎゅっとしがみついた。


「イザヤは軍服より宮廷服がいい。楽士っぽくない?イザヤらしく音楽いっぱいの儀式しようか?イザヤの歌も、神殿ですごく素敵に響きそう。私は、イザヤが作ってくれたドレスでいい。イザヤの瞳の色のドレス。」

「……では、晩餐会はそれでよかろう。よく似合っていた。」

「へ?晩餐会?私も行くの?……シーシアとの披露宴なのに……。いい。行かない。」


固辞すると、イザヤが眉をひそめた。


「なんだ?私と離れていたくないと言ったのは、嘘だったのか?……傷つくぞ。」

「それは嘘じゃないけど……。」


なんか、ずるくない?



でもイザヤは、偉そうに私に命令した。

「では、来い。なるべくそばにいろ。……そうだ、姉上の隣に席を設けよう。」


それって、身内も身内、一番の肉親のお席じゃない?

……身分も後ろ盾もない側室が座る場所じゃないと思う。



「外聞悪くない?」


私の不安をイザヤは一笑に付した。

「外野は気にするな。まいらは、私だけを観ていればいい。それだけでいいから。何もしなくてもいいから。だから。……私から、離れるな。」

最後は懇願だった。



イザヤは私を抱き寄せて、頭に唇を付けた。



ほら。

……イザヤが私を、かわいい、愛しい……と想ってくれてることは疑いようもない。


むしろ、どうして手を出さないのだろう、と思っていた。


イザヤなら、私、全然嫌じゃないし。


でも、やっとそのわけがわかった。

たぶんイザヤは、私をシーシアの代理に仕立てるために、これまで抱かなかったんだ。


じゃあ、婚礼の儀式が終わったら、今度こそ私、ホンモノの側室にしてもらえるのかな。

昼も夜も、イザヤと共にいられるのかな。



……そんな風に願ってしまう自分に気づき、ため息をついた。


シーシアと結婚するヒトなのに。



***


その日は、朝から黒い雲がどんよりと空を覆っていた。

午前中から何人もの早馬が駆け付け、カピトーリでの婚礼の儀式のつつがない進行を知らせる。



「イザヤどの。では、私どもは出立いたします。」

礼装のティガがそう挨拶に来た。