「いざや。こい。……まいら。拗ねたのか?」

イザヤは鳥を拾い上げて、私のそばにきたようだ。



「拗ねてない。嫌でもない。……でも困ってる。私、まだ16歳だし、誰ともつきあったこともないし、結婚に夢もあるし、イザヤとの結婚なんて頭から無理って思ってたから望みもしなかったけどやっぱりうれしいし、でもしょせんただの代理だと思うと淋しいし……。」

私は、思いつくままそんなことを言ってた。

どさくさ紛れにけっこう恥ずかしいことも言ってしまっていたけれど、勢いは止まらなかった。



「わかった。」

そう言って、イザヤは背後からすっぽりと私を捉えた。


鳥の伊邪耶がイザヤの手から腕をつたって、肩へとよじ登った。


「かわいい奴だな。」


イザヤは、鳥の伊邪耶に言ったのだろうか。

それとも、私に、言ったのだろうか。


判別できず、私はただイザヤの腕にぎゅっと掴まった。



「そうだな。まず、そなたはこのほど17歳になった。……適齢期だ。」


イザヤは、一つ一つ私の言葉に回答をくれるつもりらしい。


ちなみにこの世界では、秋の収穫期に年号が改まり、年齢も等しくみな1歳分の歳をとる。

……昔の日本でも採用されていた方式で、お正月にみな歳をとる、いわゆる「数え歳」というやつだ。


ただし、日本の「数え」では、生まれた時点で1歳、お正月を迎えたら2歳とカウントするのに対し、こちらは生まれた時は0歳で収穫期を迎えてはじめて1歳になるらしい。

つまり、イザヤは26歳、ティガとドラコは27歳、シーシアは22歳、リタと私は17歳になった。

この世界では、適齢期なのか。




「そなたがどのような夢を描いていたか、聞かせてみよ。まいら。私はそなたの笑顔が見たい。そなたの望みを叶えてやりたい。……婚約者どのの代理という形になるが、私とそなただけは、本気で我々の結婚式のつもりで臨めばいい。」

イザヤはそう言って、私を抱く腕に力を込めた。




……えーと、今のって……プロポーズみたいだけど、むしろ結婚詐欺よね?


微妙な気分になりながら、私は口を開いた。

「……みんなに祝福される豪華な披露宴はいらない。それより、駆け落ちでも心中でもいいから、2人きりで永遠を誓いたい。」



イザヤの息が止まった。
 

振り返って見上げると、イザヤの表情が完全にかたまってしまっていた。


……しまった。

イザヤは新婦の代理をする私が惨めな気持ちにならないように気遣ってくれたんだろうに、変なこと言っちゃった。