現在、カピトーリは次の神の花嫁を探している。

……シーシアは返り咲きたいんだろうな、たぶん。






「いざや!こら!これは止まり木じゃない!」

「イザヤ。カワイイ。イザヤ。イザヤ。オチタ。」

「落ちてないだろうが。ほら。まいらのところに行け。」


めまぐるしい世界情勢を気にするそぶりも見せず、イザヤはまた新しい楽器を買ってきたらしい。

王城でのお勤めから帰ってくると、サロンでさっそくお披露目してくれた。


ギターかな?


イザヤが弦を張っていると、鳥の伊邪耶が飛んできて、ネックと弦をちょんちょんと飛び跳ねて遊びだした。



「いざや。おいで。」

私がそう言っても、手を叩いて呼んでも、伊邪耶は来なかった。



「ほんっと、イザヤが好きよね、この子。」

仕方なく私が立ち上がって鳥を迎えに歩み寄る。


そっと手の中に入れて、またソファに戻り、私は読んでいた書物に目を落とした。


まもなく、シーシアがこの館に嫁いでくる。

せっかくなので、これから始まる一連の婚礼の儀式を勉強するつもりだ。

カピトーリ流の儀式と、オーゼラ流の儀式はけっこう違うんだけど……。



「ねえ。イザヤ。婚約の儀式はいつ、どこでやったの?」


イザヤはめんどくさそうに答えてくれた。

「私が騎士になった15歳の時だ。我が国の王城で王の御名により宣言された。婚約者どのは11歳だった。2年後に婚礼のはずだったが、婚約者どのが神の花嫁に就任した。」

「……てことは10年前かぁ。今回の婚礼の儀式もオーゼラの王城でするの?それとも、神殿でするの?」


そう尋ねると、イザヤは不機嫌になってしまった。


「当然、本来は我が国の神殿ですべきなのだが、婚約者どのはカピトーリの神の花嫁だったので、カピトーリの宮殿と神宮に義理立てしなければならないらしい。……まあ、私は行かないが。」


行かない?


「シーシアが恥かかへん?新郎不在の結婚式ってこと?」


重ねてそう聞いたけど、イザヤはギターのチューニングを始めた。


「知らぬ。よくあることだ。代理を立てれば問題ない。」

「何怒ってるの?……あ!もしかして、シーシアはオーゼラの神殿には立ち入る気がないことを、今さら怒ってるの?しょうがないやん。カピトーリの宗教は一神教で、他の神を認めないんだから。」


イザヤはむーっとした顔で、ギターを弾き始めた。