ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

帰ってきたんだ!

……て、……え?……あれ?

私……イザヤの腕の中にいる?


え?

なに?これ。



目をぱちくりして、改めて至近距離から、イザヤを見た。


お人形のようなイザヤの栗色の髪が、私の首元をくすぐっている。


……えーと……添い寝?


「……何で、ここにいるの?」

やっぱり夢だろうかと、一瞬思った。


が、イザヤは私の右頬肉を摘まんで、引っ張った。

「ここは私の館で、そなたは私の側室だ。つまり、私には、ここで眠る権利がある。……まったく。ようやく帰還許可が出たから、夜を徹して駆け付けたというのに、……他の男の夢を見てる女のために……。我ながら、情けない。」


イザヤの嘆きに、私の鼓動が激しくなった。

てか、ほっぺも普通に痛いし……。


いや、そんなことより、今、イザヤ、何て言った?


「イザヤ、私に、会いたかった?」

自惚れてるみたいで恥ずかしい気もしたけど、大事なことなので、敢えて聞いてみた。



するとイザヤも、大事なことを言っている自覚があるらしい。

私の頬からそっと指を離すと、今度はそーっとてのひらで包み込むように、私の両頬を捉えた。

「ああ。会いたかった。しかしまた……ずいぶんと不細工になってしまったな。まいら。酷い顔してるぞ。……かわいそうに。そんなに泣いたのか。……つらかったか?淋しかったか?」


イザヤ自身も、私から、言葉が欲しいんだ……。

私は何度もうなずいて見せた。


「うん。うん。うん。淋しかった。……みんな優しいから、つらくはなかったけど……イザヤがいないと、私も、鳥のいざやも、ダメみたい。……おかえりなさい。」


涙がにじんできた。


イザヤの綺麗な指が、私の涙を何度も何度も払ってくれた。



やっと、帰ってきてくれた……。

うれしくて、涙が止まらないみたい。



「……なるほど。熱があるのに、毛布も掛けず、夜着にも着替えず、ベッドに斜めに倒れて寝てしまうようでは、確かにダメだな。……縮こまって震えてたぞ。……まったく……。」


……それで、抱っこして、あっためてくれたのか……。



気恥ずかしくなって、口の中で小さく

「ごめんなさい。」

とつぶやいた。



するとイザヤは、ニコッと笑ってくれた。

「ただいま。まいら。待たせたな。」



ああ……何て素敵な笑顔なんだろう……。

こんなに近くで見ても、イザヤ、きれい……。