ここはディストピア あなたは亡国の騎士 わたしは愛玩物

リタは、涙でぐじゃぐじゃになってる私をなだめようとして、どうやらまた失言したらしい。

「帰って来るよ。シーシアさま、お帰りになったもん。」


「リタ。」

ティガが静かにたしなめた。



「……どういう意味?……そういや、ドラコも、そんなこと、ゆーてた……。」

まさか……まさか、ね?

いや、でも……。

「イザヤの出張って、もしかして、シーシアに会わないように、オーゼラから遠ざけられただけなの?……国の仕事じゃなくて……無意味な出張なの?」

言ってて、たまらなく、悲しくなってきた。


いくらオーゼラがカピトーリに恭順してると言っても……そんな……仮にも婚約者なのに……。

惨めすぎない?

……イザヤ……。

かわいそう……。


頭がぐるぐるしてきた。

足元がふらつき、うずくまりそうになった私を、ティガが慌てて支えようとしてくれた。


「いい。ありがと。……ごめんなさい。鳥のいざやを、よろしくお願いします。」

それだけいって、私は、自室へと向かった。


泣いてるからかな。

頭が痛くなってきた。

それとも熱のせいかな。


しんどい……。


とにかく、眠ろう。

鳥の伊邪耶も心配だし……早く、治さなくっちゃ。



ベッドに倒れ込むと、お洋服も脱がずに、そのまま寝入ってしまった。


毛布をかぶることもなく、……ティガがくれたお薬も飲まず……まるで意識を失うように、私は眠りに落ちた。



***


夢を見た。



私は、孝義くんの家のキッチンで、お昼ご飯を作っていた。

一生懸命作って……途中で材料が足りないことに気づいて、慌ててお買い物に行って……がんばって作ったのに、孝義くんが帰って来ない。

待っても待っても、帰って来ない。

お寺に探しに行っても、見つからなくて……。



「孝義くん……。どこ?……ご飯、さめるよぉ……。」


「タカヨシ?……誰だ?男か?」



白黒だった世界に、突然、金色の光が降り注いだ。

びっくりして、ぱちりと目を開けた。


……ら、すぐ目の前に、イザヤの顔!!!



夢かうつつかよくわからなくて、ぼんやりしている私に、イザヤは噛みつくようにつっかかってきた。

「こら!まいら!答えろ!タカヨシって誰だ!ご飯がなんだって?」

「ひっ!」

変な声を出して、私は覚醒した。


「イザヤ!!!」


夢じゃない。

イザヤだ。