鮎との電話を終わらせると、涼夜は手帳を開きスケジュールの確認をする。
クッソーダメか!?
直ぐにも鮎頭取と会って、何が起きたのか話したいと思った涼夜だが、今からテレビの収録が2本入っていて、その後も公開ラジオに出演する事になっている。夜はファッションショーの打ち合わせを兼ねスポンサーと食事をする予定にもなっている為、全く身動き取れない状態だった。
今までこんな時は、魁斗にスポンサーの事は任せる事は出来た。
だが、魁斗を手放した今は、全て涼夜自身が動かなくてはいけず、付き人として側に置く様になって間もない憲一を信頼しているとはいえ、スポンサーとの打ち合わせを任せるのは、まだ憲一には荷が重すぎる。
「クッソーッ!!」
思う様に時間を空ける事も出来ず、何が起こっているのか分からない涼夜は、怒りのまま手帳を足下へ投げ付けた。
今まで見た事のない涼夜の激しい苛立ちに、憲一は驚き涼夜に声を掛ける。
「涼夜…さん…?」
怯えた様子の憲一の声に、涼夜は我にかえった。
「なんでもない…驚かせてすまない…」
何が起きた…?
鮎からの電話に嫌な予感しかない涼夜は、まず父である雅に電話をした。
「もしもし、今、僕の方に鮎頭取から電話がありましたが…」
『ああ…私にも今し方連絡があった…』
声の様子で既に気落ちしてる雅に、涼夜は何があったのかと聞く。
『わ、私にも良く分からないんだ…
このままだと私はどうなるんだ…』
分からない…って
何やってんだよ!?
俺があんたの尻拭いしてやろうと思ってるのに…
分からないだ…!?
「融資は!?
融資の話はどうなるんですか!?」
『分からない…』
不安を隠せない雅は、今までに無い不安そうな小さな声で答えた。
「分からないって!?
しっかりして下さいよ!?
会社が無くなるかもしれないんですよ!?」
母さんの…
母さんのブラックバードが…
「もう良い!
僕がなんとかするので、あなたは明日鮎頭取と会える様に段取りだけして下さい!
良いですね!!」
『あ、ああ…』
情けない声で応える雅に、苛立ちを隠せない涼夜だった。

