「涼夜さん、最近ずっと顔色悪いですよ?
ちゃんと寝てますか?」
最近、運転手を兼ねて付き人として連れている、涼夜の店の店員である憲一が、涼夜を心配してルームミラー越しに声を掛ける。
ここ数日、涼夜が口に入れる物と言ったら栄養ドリンクだけで、眠ることも出来なく移動する車の中で少しばかり目を瞑るだけになっていた。
その為、顔色も悪く随分痩せていた。
魁斗《あいつ》とは、巷で言う体の関係は無かったけど…
こんなにも、人の温もりが恋しくなるとは思わなかった…
それだけ魁斗《あいつ》に心許してたって事か…?
自分で突き放していながら…フッ…情けねえ…
「大丈夫だ。TV局に着いたら起こしてくれ」と言って涼夜は目を瞑った。
だが、目を瞑って直ぐスーツの内ポケットに入れていた携帯電話が鳴った。相手は双葉銀行頭取の鮎だった。
「もしもし?」
『涼夜君か!?』
鮎の少し慌てた様子の声に、涼夜は何事かと心配になる。
「はい。どうかされましたか?」
『君に謝らないといけない事になってしまって…』
「僕に謝るとは?
何かありましたか?」
『妃都美との結婚の事なんだが…白紙に戻させて貰えないだろか?』
ん?
何が有った…
結婚を白紙に戻すって…
融資の件はどうなる…会社は…?
「何が有ったんですか?」
『兎に角、妃都美との事は…』
「電話では何ですので、直接お会いしてお話を聞かせてください!」

