(トントン)
翌日、いつもの様に起床時間を知らせる高城のドアをノックにも、涼夜は何も応えなかった。
「涼夜様?」
いつもなら、とうに起きている涼夜だが、明け方まで仕事をしていた涼夜は、つい1時間程前にベットに入ったばかりだった。
その為、涼夜はまだ夢の中にいた。
(ガチャッ)
高城は部屋に入ると、未だ起きる様子の無い涼夜に、今日の予定を告げる。
「涼夜様?
早く起きて下さい!
本日は迫様との、打ち合わせのご予定となっております。
あの方は時間に厳しいお方です、急いでお支度を!」と言って、高城は涼夜を起こす。
煩いなぁ…
「さっき寝たばっかなんだよ!
もう少し寝かせてくれ!
魁斗、迫さんには適当に連絡しといてくれ?」と涼夜は言う。
勿論、魁斗は帰って来て居らず、代わりに返事を返したのは、「魁斗様はいらっしゃいませんが?」と言う高城の言葉だった。
涼夜は、昨日、魁斗をクビにした事を思い出し、布団から顔だけを出した。
「…なんで…俺の仕事の予定、高城《おまえ》が知ってんの?」
「先程、魁斗様がいらっしゃいまして、涼夜様のスケジュールの書かれた魁斗様の手帳を置いて行かれました」
「っ魁斗が!?」
慌てて起き部屋を出ようとする涼夜に、高城は「魁斗様は、もう、お帰りになられました」と冷たく言い放った。
「…そうか…?」
「呼び戻したら如何ですか?」と言う高城に涼夜は首を振る。
「…呼び戻して…どうする?
会社の為とは言え、あんな女と結婚する事を選んだ俺だ。彼奴を引き止める権利は無い…
これ以上…彼奴を苦しめたくないんだ…」
「本当にそれで良いのですか?」
「…仕方ないだろ…」
お袋が死んだ時、約束したんだ…
そして俺は誓った…
いつか、全てを取り戻すと…

