涼夜の話がなんなのか気になる雅は、会社へ向かう車の中でも、なんの話かと聞いたが、涼夜は最後まで会社で話すと言ってなにも話さなかった。
blackbird本社に到着すると、早く話せと言わんばかりに、雅は人払いをした。
「で、話は何かな?」
「妃都美さん、妊娠してますよね?」
「っなぜ!?」
驚きを隠せない雅をみて、涼夜は確信する。
「やっぱり、お父様の子でしたか?」
「‥‥‥‥」
「鮎頭取が知ったら、融資どうなるでしょうね?」
「‥涼夜‥この事は‥」
「心配しなくても良いですよ?
僕からは頭取に何も言いませんから?」
「それじゃ‥」
「ええ。
お父様の為に、妃都美さんとこのまま結婚します。
勿論、偽装結婚になりますが?
お腹の子も僕の子供として、戸籍に入れても良い。
その代わり、今後、魁斗には関わらないで下さい!」
「魁斗君に関わるなとは?
どう言う事かな?」と聞く雅に、全て分かってると涼夜は言う。
「あなたが魁斗の実家の借金を立替、その借金を盾に魁斗を脅し、僕の部屋に盗聴器を付けさせていた事や、魁斗から僕の仕事の情報を得て、邪魔していた事も知ってます」真っ直ぐ雅を見て言う涼夜を、雅は笑った。
「ふっ‥やっぱり気づいていたか?
分かった。魁斗君は開放してやる。
借金も全て無しにしてやる」と言う雅に、涼夜はそれからと言い足した。
「なんだ、まだ有るのか?」
「5、600万程度のはした金で、雅《他人》の子を孕んでる女と、僕が結婚する訳ないじゃ無いですか?」
「なら、他になにを!?」
「屋敷と工場跡地を僕に下さい!」
「屋敷とあの工場を?」
雅はもともと入婿で、屋敷は涼夜の母方のモノだったのだ。それを取り返したいと、随分前から思っていたのだ。
「ええ。
その代わり僕が持ってる、母から譲り受けた、会社の株全てあなたに譲りますよ?
貴方にとって悪い話しじゃ無いと思いますが?」
もともと、blackbirdは涼夜の母が立ち上げた会社だったのだ。その母が亡くなる際、屋敷は雅の物になったが、母親が保有していた株全てを涼夜が相続していた。そして、涼夜が保有する株は、全体の75%にもあたる。
その為、会社の経営不振に陥った時点で、雅を社長職から退かせる事も、涼夜がblackbirdの社長になる事も出来たのだが、敢えてそれを涼夜は行わなかった。
「‥良いだろう」
「あっそれから、僕達が結婚して暫くしたら、彼女を連れて屋敷を出て行ってくださいね?
頭の良い妃都美《ひと》らしいから、後の事は彼女がなんとでも考えて、頭取を騙してくれるでしょ?」

