涼夜が屋敷へ帰ると、執事の高城と数名の使用人が、涼夜を出迎えてくれる。
同時に、魁斗が長い廊下を涼夜めがけて走って来る。
「涼夜、遅いぃ!
何処に行ってたのよー!」
そして、駆け寄った魁斗は使用人の目など気にせず、涼夜へと抱きつくが、なにを思ったのか魁斗は涼夜の頬を思いっきり平手打ちした。
(バッシン!)
すると、涼夜の綺麗な顔には、大きな手形がくっきりと浮かんだ。
「ってぇ‥魁斗なにする!?」
「涼夜女の臭いがする!
私と言うものが有りながら、酷いじゃない!
何処の女と一緒だったのよ!?
浮気なんて許さないんだから!
ねぇ何処の女と一緒だったのよ!?」
魁斗は涼夜の胸ぐらを掴み怒って見せたが、涼夜を見る魁斗の目は笑っていた。
魁斗《お前》思いっきり叩きすぎだろ!
「魁斗様!
涼夜様になんて事を‥直ぐに冷やすモノをお持ち致します」
慌てる高城に、涼夜は大丈夫だと言うと、怒ってる魁斗の口を自分の口で塞いだ。
「どんな女より、魁斗《おまえ》の方が美しいし、俺は魁斗《おまえ》を愛してる」
二人の姿を見て、驚きヒキぎみの使用人達を高城は持ち場へと戻らせ、涼夜達二人を部屋へと連れて行く。
「涼夜様、使用人達の前ではお控え下さい!と、わたくしは何度もお願い申しあげておりますが!?
魁斗様も、使用人達の前であの様な事は、二度となさいません様に!
お二人共宜しいですね!?」
高城の叱責に涼夜は「はいはい‥」と空返事をする。
それに対して高城は深い溜息をついた。
それを見た魁斗は「高城さん、そんなに溜息ばかり吐いてると、幸せが逃げちゃうよ?」と言う。
だが高城は「私《わたくし》に望む幸せなど有りません!そんな物はとうの昔に諦め、捨てております!」と言い切った。
そんな高城に魁斗は「可哀想‥」と言って、涼夜を見た。

