涼夜は、妃都美を連れエレベーターホールまで来ると、バーのある上へ向かうボタンではなく、下へ向かうボタンを押した。
「バーなら、上の階じゃありませんこと?」
冷たく言い放つ妃都美に、涼夜はニッコリ微笑む。
そして、涼夜は胸ポケットから客室のカードキーを
取り出し妃都美へと見せた。
「もっとお互いの事知るためにも、バーなんかでなく静かなお部屋で、二人っきりでお話ししませんか?」
「‥えっ?‥お‥お話し‥?」
妃都美は、涼夜の言葉に驚きを隠せず、いままでとは違って、余裕の無さを顔に出した。
「お父様の承諾も得てますし、良いですよね?」
「あ、あの‥涼夜さん‥わ、わたくし‥」
涼夜は、部屋のカードキーを見せられ焦る妃都美の肩を抱き、エレベーターに乗り込むと、客室のある階のボタンを押した。
そして、エレベーターが軽快な音を鳴らしドアが開くと足取りの重い妃都美の体を、涼夜は少し強引に背中を押し客室フロワーへと降りた。
「‥りょ、涼夜さん‥?」
「心配しなくても大丈夫ですよ?
僕、女性には優しくするタイプですから?」
ドアにカードキーを差し込む間も、逃がさないとばかりに、涼夜は妃都美の肩を抱き寄せていた。
「り‥涼夜さん‥」
部屋へ入ると、涼夜は妃都美に口づけをし、怯える妃都美の髪を撫で指に絡めた。
「日本人ならではの、黒い瞳に綺麗な黒髪だ‥
大和撫子とは貴女の為にある言葉ですね?
こんな素敵な方と結ばれるなんて、僕は世界一幸せ者です。
早く貴女を僕のものにしたい。
シャワー、先に浴びられますか?」
「‥あっいえ、涼夜さんお先にどうぞ‥‥」
「そうですか?
じゃ、僕からお先に失礼します」
涼夜は、ニッコリ微笑みバスルームへ入ると、シャワーの蛇口を全開にした。

