全てを失っても手に入れたい女がいる 2


その後は、自分の家の成功話や、他人の家の噂話と、涼夜の興味のない話で、3人は盛り上がっていた。

「涼夜君には、余り楽しい話では無かったかな?」

「あっいえ、そんな事は…
ただ、妃都美さんは私より、父との方が気が合う様に見受けられますが、本当に僕なんかで宜しいのでしょうか?」

「涼夜! 
なんて失礼な事を…
お二人に謝りなさい!」

「失礼しました…」

「いや、涼夜君が心配するのも分からんでもない。
でもな涼夜君?
私としては、娘を嫁に出すからには、相手の親にも可愛がって貰わなくては困るんだよ?
嫁が自分の親と仲が良いと言うのは良い事なんだよ?
君も結婚したら分かる。
嫁と姑の間に入る事がどれだけ大変な事か…
妃都美の場合は、姑ではなく舅になる訳だがな?ワハハハ。
食事も終わる事だし、この後は2人上のバーで話でもしたらどうかな?
なんなら、今夜はお泊まりして来ても良いぞ?妃都美」

「まぁパパったら!
私、恥ずかしいですわ!」

顔を赤らめる娘を見て、ウブな娘だと笑う親に、涼夜は腹の底で笑っていた。

「僕の事を気に入って頂き、とても光栄です。
お言葉に甘えて、妃都美さんを少しお借り致します。帰りは、遅くならないうちに御宅までお送り致しますので?」

頼まれても、この女と一夜を共にするのは御免だ!

「モデルなどしてるから、軽い男とばかり思っていたが、なかなか真面目な男じゃないか?
妃都美、パパは涼夜君を気に入ったぞ!
後の事は当人達に任せた」

涼夜が妃都美を連れ席を離れた後、雅は融資の約束を取り付け、頭取をロビーで見送った。