全てを失っても手に入れたい女がいる 2


アトリエには、小関と縫製担当の橋元が仕事をしており、涼夜が声を掛けると、M&Mのジャケット衣装が出来たと報告を受け、確認するとどれも思っていた以上の出来に、涼夜は大満足する。

「へぇー思った以上にドレープが効いて良いな?」

「ええ。僕も出来栄えに感動してます。流石涼夜さんですよ!こんなの雅さんには無理でしょうから!」
と、橋元が大喜びする。

「おい、橋元!」

それを小関が叱責するが、正直涼夜も同感だった。
もともと、この仕事女性アイドルM&Mのジャケット衣装は、雅に来た仕事だった。
だが、M&Mのコンセプトがとろけるほど甘いだった為、雅自身も無理だと思ったらしく、涼夜に回して来たのだ。

「だってホントの事じゃないですか?」

「ホントだとしても、モノには口に出して良い事と悪い事があるんだよ! 
お前も良い大人なんだから気を付けろ!」と小関が橋元を諭した。
 
「で、今日魁斗さんは?」

いつも涼夜と一緒にいる魁斗の姿が見えない事に、小関が不思議に思ったのか、心配して聞く。

「彼奴なら、今頃ほっと胸を撫で下ろしてるだろうよ?」と、言う涼夜だが、小関達は何の事か分からず、二人は首を傾げていた。

本来涼夜の今日の予定は、魁斗と一緒にデザイナー迫と一緒に、ホテルの一室にいるはずだったのだ。
以前から迫からの仕事のオファーを貰っており、いつかチャンスがあればと、雅に知れることのない様、極秘に準備を進めて来ていた。

そして、今日非公開のまま極数人の間で契約を結ぶ手筈だったが、雅は何かを感じ取ったのか、涼夜を呼び出し会社の為に見合いを勧めて来たのだ。

だが、この迫との仕事を諦めたく無かった涼夜は、仕方なく契約の全てを魁斗一人に任せたのだ。