全てを失っても手に入れたい女がいる 2


番組収録が終わった後も、未だに群がるファンを鬱陶しいと思いながらも、通行の妨げとなってる為、いつまでもその場に止まるわけにもいかず、魁斗の口癖である『ファンは大切にしろ!』の言葉を思い出し、今回だけは仕方ないと諦めた涼夜は〝ファンサービス〟と呟き、その後も笑顔で王子を演じつつ、ファン一行をその場から連れ離れる事にした。

「ねぇ、今君たちの間で流行ってるものってナニ?」

おい!っ触んな!
ちょっおい!…クッソーどこ触ってんだよ!?
お前らは、恥じらいと言うものはないのか…?

涼夜は怒りを必死に抑え、ファンである彼女らから、せめて何か得るモノは無いかと耳だけは集中し、笑顔で自分の店であるAngel kissへと、ファンを連れ立って行った。

「あっ、涼夜さん、お疲れ様です!」

涼夜に伴って来たファンの騒ぎを聞きつけ、店内にいたAngel kissのアルバイトリーダーである憲一が、涼夜を出迎えた。

「お疲れ!憲一、さっきはアリガトな!」

「いえ、それにしても拡散スゴかったすね?」

涼夜の出現情報をSNSで流したのは、涼夜に頼まれたこの憲一であった。

「お前達もこれから忙しくなるから、覚悟しとけよ?」

「はい!頑張ります!」

涼夜は、全てのスタッフに労いの言葉をかけ、二階のアトリエへと上がった。

「お疲れ!」