レポーターの質問に笑顔で受け答えしながらも、涼夜はいくつか洋服を選ぶと、店員に渡し試着室へと向かう。
『あっ涼夜さん! ご試着ですか?
出来ましたら、試着した姿を視聴者の皆さんへ見せて頂けないでしょうか?』
「ええ、良いですよ?
じゃ、着たら一度出て来ますね?」
撮影時以外、他人に見せる事のない試着姿、涼夜は面倒くさいと思いながらも、女性レポーターからの要望にニッコリ笑って答えた。
そして約束した通り、涼夜は試着する度にフィッテングルームから出て来て、視聴者に洋服をアピールして見せた。
『さすが涼夜さん!
何を着てもカッコ良いですね?』
「いえ、迫さんのデザインがステキなんですよ!
迫さんのデザインする洋服は、男性をカッコ良く見せてくれるステキなデザインばかりで、ホント選ぶのも困りますね?
あっ!勿論、僕の父のデザインするblackbirdの洋服もステキですから、皆さんblackbirdもよろしくお願いしますね?」
涼夜は、迫の洋服の良さをアピールするだけでなく、雅の会社blackbirdの宣伝も忘れなかった。
『涼夜さん、実は、いまここの店長さんにお願いして、迫さんに連絡取ってもらったら、是非、涼夜さんとお話したいそうなんですけど、どうでしょう?』
「えっ! ホントですか?」
涼夜はスタッフから電話を受け取り、デザイナー迫と話す事になった。勿論、会話は番組内で流れる。
「もしもし、初めまして黒羽涼夜です」
『初めまして迫です。私のデザインした洋服を気に入って頂いてるそうで、有り難うございます』
「いえ、僕、迫さんの洋服は学生の時から好きで、フランスにいる時は、ずっと迫さんの洋服着てたんで、こうして憧れの方とお話し出来て光栄です」
『私も君のデザイナーとしてのセンス推してるんですよ?
感性が、君のお母様と似てらっしょる。
出来たら、一緒に何か仕事したいね?』
涼夜の亡くなった母親と、父親である雅、そして迫は、同じ大学のデザイン科で学んだ親友でもあったのだ。
「ホントですか? 是非!」
『あっ!そうだ。出来たらうちのスタッフ達に、君ならではのコーディネートの仕方をご教授願えないだろうか?
教授料は、うちの洋服好きな物をプレゼントするという事でどうだろう?』
「光栄です!でも、僕なんかが良いんですか?」
迫の依頼を受けた涼夜は、店内のマネキン全てを涼夜モデルに変更し、商品のデザインは勿論、品質の良さも番組内でアピールした。
そして最後には、視聴者へとプレゼントまでしたのだ。
『涼夜さんが本日お買い求めになったお洋服と、同じお洋服を、涼夜さんが視聴者の皆さんへプレゼント致します。
キーワードをお忘れなくご応募お待ちしております!
涼夜さん、本日は突然の密着に有り難う御座いました』
「こちらこそ、有り難う御座いました」
こうして1時間による密着取材は終わった。
ふっーマジ疲れた…
この後、まだ厄介な仕事があると思うとウンザリするわ…
だが、まずまずの出来だろ…?

