涼夜が一歩ビルを出た瞬間、辺りは騒然となった。
野に放たれた兎…
では無く、虎が野に放たれたのだ。
涼夜が本社ビルにいる事は、既にSNSなどで拡散されており、ロビーに降りて来た時には、本社ビル前は涼夜のファンで溢れ、警備員による規制が始まっていた。それに伴って幾つかのメディアも駆けつけ、騒動の根源が涼夜だと分かると、マイクが向けられインタビューまで始まった。
『涼夜さん! 涼夜さん! これはblackbirdの新作か何かのピーアールでしょうか?』
「すいません、違うんです。
空き時間にちょっと買い物でもと思って…
その前に、父の会社に寄ったらこんな事に…
なんか大変な事になっちゃって、ほんとすいません。
今日は、マネージャーも若いスタッフも連れてなくて…」
涼夜は騒ぎを起こして申し訳ないと、謝罪をするとその場を急ぎ立ち去ろうとしたが、駆け付けたメディアから、生放送で密着取材をしたいとの申し出があった。だが涼夜は、周囲に迷惑を掛けるからと一度は断ったが、メディアスタッフが人集りの整理を始めた為、ならばと密着取材を受ける事にした。
そして、そのままファンを引き連れ、ファッション街へと移動した。

