次の日、出勤すると副社長は良くなっているどころか、さらに悪化していた。彼の言う通り、このやり取りを今日は何度もしてきた。
 
だけど私の訴えは退けられ、こうして会食場所である日本料理店へ向かっている。
 助手席から後部座席にいる副社長に伝える。

「これも耳にタコかもしれませんが、これからお会いする方は酒豪で有名です。熱があるのにアルコールは危険ですよ?」

「それも大丈夫。薬は飲んでいないから。逆に特効薬になるかもしれないよ?」

「副社長?」

 ケラケラ笑いながら呑気に言う彼をジロリと睨む。すると副社長は肩をすくめると、表情を引き締めた。

「ごめんね、瑠璃ちゃん。今から会う相手は今後の俺にとって重要な存在なんだ。……ほら、重役たちの前で言っちゃっただろ? 俺がどうにかするって。それについての策はその人にかかっているんだ」

「そう、だったんですね」

 一年以内にどうにかするって言っていたよね。たしかにそろそろなにか案を出さないといけない時期だ。

「多くの社員を切ることだけはしたくない。……大丈夫、酒には強いほうだから」

 安心させるように言う彼の姿に、胸がギュッと締めつけられる。