笑って言うけれど、そんなことあるわけがない。もしかして……。

「失礼します」

 断りを入れて彼の額に手を当てると、やはり熱い。

「熱があるじゃないですか」

「あ、バレちゃった?」

「バレちゃったではありません!」

 思わず立ち上がると、「落ち着いて」なんて言いながら私を宥める。

「大丈夫、微熱だから。食欲はあるし、元気だから」

「しかし……」

「今日は早く帰って寝るから。だから心配しないで」

 大丈夫なのだろうか。本当はこのまま帰ってほしいところだけど、夕方から重要な会議が入っている。

「わかりました。では進行役の社員に早く回すよう伝えておきます」

「大丈夫だよ、進行役の人にプレッシャー与えたら気の毒でしょ?」

 クスクスと笑うけれど、心配でたまらない。

「資料ありがとうね」

 そう言うと逃げるように戻っていく。
 進行役の社員には申し訳ないが、やはり副社長の体調が優れないことを伝え、どうにか巻いてもらおう。
 電話を取ってさっそく連絡した。


「副社長、本当に大丈夫ですか? やはり今からでもお断りするべきではないでしょうか?」

「大丈夫だって。瑠璃ちゃん心配しすぎ。このやり取り、今日何回したと思ってるの? それにもう向かっているんだから今さらでしょ?」

「そうですが……」