俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

「もう耳にタコだと思いますが、いい加減下の名前で呼ぶのはやめていただけませんか?」

「無理。好きな子のかわいい名前を常に呼んでいたいから」

「冗談はほどほどにしてください」

 本気じゃないとわかってはいても、ドキッとしてしまう自分が憎い。こういう甘い言葉を囁かれることに、慣れていないからって単純すぎるでしょ。

「冗談じゃないのになー。……あ、今夜の食事の件もそう。プライベートだけど、視察も兼ねているんだ。ライバル社のホテルのレストランに行きたくてさ。同伴してくれると助かるんだけど」

「でしたら最初からそうおっしゃってください。……そういうことでしたら、ご一緒いたします」

 きっと重役会議で啖呵を切った策について、参考にしたいんだよね。だったら喜んで同伴する。

「よかった、ありがとう助かるよ。……もし、仕事と言っても断られた場合用に切り札を用意していたんだけど、使わずに済んでよかった」

「切り札、ですか?」

「あぁ。瑠璃ちゃんが喜ぶとびっきりの、ね」

 そんな含み笑いで言われたら気になるのですが。

「それは今夜のサプライズにとっておくから、絶対付き合ってよ?」

「かしこまりました」