俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

 考え込んでいると、感じる視線。顔を上げると副社長がジーッと私を見つめていた。

「あの……?」

 居たたまれなくなり声をかけると、「フフッ」と笑う。

「眉間に皺を刻んでいるから怒っていると思ったけど……違うよね? 考え事でもしていた?」

「失礼しました、お話し中に」

 咄嗟に自分の眉間を前髪で隠し謝るものの、そういえば考え事をしていると思われたのは初めてだと気づく。
 大抵なにか考えていると、必ず怒っていると思われていたから。

 空港での圭太君への気持ちを言い当てられたことといい、副社長は本当によく他人の気持ちが理解できる。
 感服していると、彼は得意げに笑った。

「仕事中はほぼ一緒にいるからな。少しずつわかってきたよ、瑠璃ちゃんのことが。……ただ単に感情を表に出すことが苦手なだけだろ?」

「……は、い」

 本当に驚きだ。まだ二週間も一緒に仕事をしていないのに、そこまで見抜かれるなんて。

「いいんじゃない? それもまた瑠璃ちゃんの魅力のひとつでしょ。それに俺、いつも愛想よく笑顔でいられると、胡散臭く感じちゃうんだよね。……だから仕事も完璧にデキる瑠璃ちゃんを秘書につけてもらえて、父さんに感謝しているよ」

「副社長……」

 もう、なんですか。不意打ちで褒められたらなんて答えたらいいのかわからなくなる。

 それもわかっているのか、副社長は空になったカップを私に渡した。