俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

「失礼しました。……しかしどういうことですか? なにも考えていないとは」

 だって重役たちの前で啖呵を切ったんでしょ?

 詰め寄ると、副社長は残りの珈琲を飲み干し、私を安心させるように言う。

「大丈夫、どうにかなるよ。まずは近場だけでもいいから、ホテルを回りたいな。瑠璃ちゃん、どうにかスケジュール調整してくれない?」

「わかりました。……しかし本当に大丈夫なんですか? 成果を出さなければ副社長は……」

「責任を取って辞任させられるだろうねぇ」

 私が言う前にサラッと言った彼に目を見開いた。

 やはりそういうことになるよね? それなのに副社長ってば、楽観的に構えていて大丈夫なのだろうか。

「それに会議中、どうも俺がそう言うように持っていかれた感が否めないんだ」

「どういうことでしょうか?」

 すかさず聞くと、副社長は顎に手をあてた。

「怒るように仕向けられたというか……。俺がどうにかするって言ったら、それを待ってましたと言わんばかりに、みんなホッとした顔をしたんだよな」

 もしかして彼が副社長職に就いていることを、おもしろく思っていない人物がいる?
 何十年も会社に仕え、空いた副社長席を狙っていた者は大勢いるはず。ただでなくとも副社長、お若いし……。