俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

「愚痴を聞くのも秘書の仕事だろ? 瑠璃ちゃんに聞いてもらうことによって俺はスッキリできて、気持ちよく嫌いな事務作業をすることができる」

 それを言われてしまうと、私には彼の言う愚痴を聞くしかなくなる。

「それで会議はどうなったのですか?」

 片づけをしながら尋ねると、彼は意気揚々と話してくれた。

「だから俺はビシッと言ってやったよ。俺が不振続きの日本ホテルの経営を立て直してみせます! ってな。重役たちは『若き手腕に期待しております』なんて嫌味を言ってきたから、一年以内に必ず成果を出すと言ってやったさ。まぁ……また『お手並み拝見させていただきます』なんて言われてしまったけど」

 思わず手が止まる。だって重役相手にそんな啖呵を切って大丈夫なのだろうか。いや、イギリスで実績を残している副社長のことだ。なにか策があるんだよね?
 とはいえ心配になり、恐る恐る彼に問うた。

「一年以内に成果を出せるような策をお持ちなんですか?」

「策もなにも、まだなにも考えていないよ」

「えっ!?」

 あっけらかんと言うものだから、思わず大きな声が出てしまった。