俺様副社長は愛しの秘書を独占したい

 給湯室で珈琲を淹れていると、ドアが開く音が聞こえてきた。

「おはよう、瑠璃ちゃん。……ん? もしかして珈琲を淹れてくれてるの?」

「おはようございます、副社長。あと少しでできますのでお待ちください」

「じゃあここで待ってるよ」

 給湯室に入ってくると、なぜかピタリと寄り添って私を凝視してくる。

「あの、そんなに見られるとやりづらいのですが?」

「いや~俺のために珈琲を淹れている瑠璃ちゃんの姿に、疲れた心を癒してもらおうと思って」

 そう言うと副社長はシンクに寄りかかり、グルグルと自分の肩を回した。

「頭がお固い重役たちを相手にしてきたからね。疲労困憊だよ。どうしてすぐに人を切る方法しか思いつかないのか……。それで自分たちはなにもしないはあり得ないと思わない?」

 同意を求められても、返答に困る。
 しかし副社長の話を聞く限りでは、ニューヨークにいた時に聞いた噂は本当だったようだ。日本で展開しているホテルが不振だと。

 それもあって副社長が日本本社に異動になったらしいけれど……この噂も本当だったのかもしれない。

「お疲れ様でした。どうぞ」

 敢えて彼の質問には答えずに淹れたての珈琲を渡すと、「ありがとう」と言いながら受け取った。それをここでおいしそうに飲む。

「あの、自室に戻られては?」

「え、瑠璃ちゃん俺の愚痴を聞いてくれないの?」

「愚痴、ですか?」

 驚く私に副社長は顔をしかめた。